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福利厚生とは?定義やメリットを経営者向けにわかりやすく解説

経営課題事例

2024-02-07

「福利厚生とは」をテーマに据え、定義や分類、メリット・デメリット、主要な福利厚生制度の事例について経営者向けに解説します

目次

福利厚生(ふくりこうせい)を充実させて、従業員満足度をあげて会社の成長につなげたい経営者は、福利厚生の基本をおさえましょう。

福利厚生の「福利」には「幸福と利益」、「厚生」には「人の生活を健康で豊かなものにすること」という意味がありますが、「福利厚生」とつなげて使う場合には「会社などの組織・団体が、仕事に従事する者だけに提供する待遇や利便性」を指すことが一般的です。

本記事では、福利厚生の定義からメリット・デメリット、主要な福利厚生制度の事例までご紹介します。

記事の後半には、経営者のよくある質問や疑問に答える「福利厚生についての一問一答」として、パート・アルバイトや個人事業主でも福利厚生の対象者になるのか、退職金・産休育休・有給休暇・在宅勤務は福利厚生にあたるのか、など回答します。

1.福利厚生の定義(目的と対象者)

福利厚生とは、条件を満たせば社員が一律で得られる給与以外の「利益」です。

ただし、会社が社員に対して提供する利益が全て福利厚生と認められる訳ではありません。

福利厚生とみなす定義は次のとおりです。

  • 社員が安心して働ける、働きやすくする目的がある
  • 条件を満たせば社員の誰もが同じ待遇を得られる[均等待遇:労働基準法 第三条(均等待遇)|e-Gov]
  • 金額などが「社会通念上相当」である
  • 職務内容や職責が異なる場合、違いを考慮した待遇である[均衡待遇:パートタイム・有期雇用労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)第八条(不合理な待遇の禁止)|e-Gov]

会社の福利厚生は就業規則や社内規程などで定められた労働条件の一種であるため、社員が安心して働ける、働きやすくする目的があります。

会社の福利厚生で使われる費用は、次のいずれかの条件を満たせば節税になります。

  • 社会保険など法律で提供を義務付けられた「法定福利厚生」は法定福利費に計上する
  • 慶弔見舞金など会社の判断で提供する「法定外福利厚生」は福利厚生費に計上する
  • 各種法律や国税庁の指針(法解釈通達〔給与等に係る経済的利益〕|国税庁)が示されている福利厚生制度については税制上の優遇条件を満たす

ただし、法定外福利厚生については「均等待遇」と「社会通念上相当」でなければ、福利厚生とみなされず、福利厚生費に計上できず、税制上の優遇も受けられません。
参照:No.5261 交際費等と福利厚生費との区分|国税庁

所得税がかかる給与や賞与とは別枠の「利益」である以上、福利厚生という名目での税逃れを防ぐための定義と言えるでしょう。

福利厚生費について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生費とは?定義や類語との違いから非課税要件まで解説

また、同一労働同一賃金の原則にある「均衡待遇」により、通常勤務の社員と、別の社員を比較して職務内容や職責が異なる場合、その違いを考慮した待遇でなければなりません。

社員間で福利厚生の待遇差があること自体は問題ありませんが、待遇差には職務内容や職責などに照らした合理的な根拠が必要です。

福利厚生の目的

福利厚生の主な目的は「社員が安心して働けるようにする」というものですが、福利厚生の種類によって少し意味合いが変わります。

福利厚生の種類は、法令で提供や条件など義務付けられている「法定福利厚生」と、企業の判断で独自の条件で提供される「法定外福利厚生」の2つに分かれます。

法律で定められた「法定福利厚生」には「社員が安心して働けるようにする」という国の安全対策としての狙いがある一方、企業の判断で提供される「法定外福利厚生」には、社員の帰属意識を高め、最終的に会社を成長させる狙いがあります。

最低限の福利厚生(法定福利厚生)に上乗せして、独自の福利厚生(法定外福利厚生)を提供することにより、仕事の能率アップにつながり、人材の流出を防げる可能性があります。

福利厚生の目的の比較

法定福利厚生

比較点

法定外福利厚生

労働者向けの国の安全対策を行い、全ての労働者が安心して働けるようにする

目的

社員の待遇向上施策を行い、社員の帰属意識を高め、最終的に会社の成長や競争力強化につなげる

  • 労働者が働けなくなったときなどの条件に応じて金銭を支給する[社会保険]
  • 適切に休ませる[法定休暇]
  • 心身の健康管理をする[定期健康診断、ストレスチェックなど]

主な例

  • 病気や怪我などでも働きやすくする[病気休暇や病気休業など治療と仕事の両立支援の制度]
  • 休暇を与えて余暇を充実させる[リフレッシュ休暇制度(長期勤続休暇制度)やワーケーション制度、ブレジャー制度など]
  • 仕事の能率を上げる(テレワーク制度やフレックスタイム勤務制度などの働き方に関する制度)

福利厚生の対象者

福利厚生を受ける対象者は、事業に従業する社員全員です。

社員の勤務形態には通常勤務で働く「正社員」以外に、契約社員、派遣社員、パート・アルバイト、臨時社員、嘱託社員、役員などが挙げられますが、正社員と役員が最も福利厚生が手厚く、それ以外の社員はやや充実度が落ちる傾向があります。

多くの会社で、通常勤務の社員と比較して職務内容や職責が異なる場合、その違いを考慮した待遇を設定しているためです。

なお、「勤務形態の違い」だけを根拠にした福利厚生の待遇差が見られる場合、合理的ではないため、是正の必要があります。

合理的な待遇差かどうか、社内でガイドライン・指針を作成して説明する必要があります。
参照:パートタイム・有期雇用労働法が施行されます―正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差が禁止されます!―|厚生労働省

社員の種別と福利厚生について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
社員の種類で福利厚生が違うとどうなる?待遇差の見直し方法を解説

派遣社員と福利厚生について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
派遣社員が使える福利厚生の条件はどのように決まる?

2.福利厚生を充実させるメリットとデメリット

福利厚生を充実させるメリットとデメリットをまとめると次のとおりです。

福利厚生を充実させるメリット

福利厚生を充実させるデメリット

  • 従業員満足度を向上させる
  • 節税効果がある
  • 採用広報やブランディングにつながる
  • 財源の確保が難しい
  • 福利厚生の管理工数がかかる
  • 導入した福利厚生制度は廃止しにくい

なお、福利厚生制度ごとのメリット・デメリットについて知りたい方は次の記事で詳しく解説しています。
リモートワークを福利厚生に導入する方法と在宅勤務支援策を解説

メリット1.従業員満足度を向上させる

福利厚生に対する満足度が高い会社は従業員満足度も高く、離職率も低くなる傾向があるため、優秀な人材が流出しにくくなります。

福利厚生に関する調査では、福利厚生が充実している会社の方が「働きやすい」または「どちらかといえば働きやすい」と回答する社員が多い傾向があるため、福利厚生の充実度が働きやすさにつながり、従業員満足度を高めるものと考えられます。
参照:「働きやすい・働きがいのある 職場づくりに関する調査 報告書」(PDF)|厚生労働省

福利厚生と従業員満足度について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
従業員満足度が高くなる福利厚生とは?

メリット2.節税効果がある

法定外福利厚生にかかる費用は、国税庁などが示す要件を満たせば「福利厚生費」の勘定科目で処理して経費にできるため、うまく活用すれば節税効果も見込めます。

例えば、社員の住宅に関する費用をサポートする福利厚生を検討する場合、社員の給与所得の一部となる「住宅手当」制度よりも、社員寮として借上げて家賃の一部を会社が負担する「家賃補助」制度の方が、福利厚生費として経費に計上できるため、会社が支払う社会保険料を節税できます。

参照:No.2508 給与所得となるもの|国税庁
No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき|国税庁

メリット3.採用広報やブランディングになる

充実した福利厚生で高い従業員満足度と低い離職率を維持できれば、採用広報にプラスで、広報費をかけて募集しなくとも、必要十分な人材を確保できる可能性が高まります。

他にも、会社の個性を出したユニークな福利厚生を作り、社内向けに体験や成果を社内報などで発信して社員同士の交流を促進しつつ、社外向けにはSNSで共有することで、採用広報だけでなく、会社のブランディングに活用するケースも見られます。

面白い福利厚生について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
面白い福利厚生とは?企業の個性を引き出す人事制度を整えよう

福利厚生を充実させる1つめのデメリットとしては「財源の確保が難しい」が挙げられます。

デメリット1.財源の確保が難しい

福利厚生は、基本的に会社の事業資金からまかなわれます。

法定福利厚生である社会保険費は一部、社員と折半するケースがあり、法定外福利厚生の費用でも、社会通念上相当とみなされるために社員に一部の費用負担を求めるケースはありますが、福利厚生にかかる費用の多くは会社が負担する点は変わりません。

福利厚生の財源確保の方法として、国や地方自治体の福利厚生に関する補助金や助成金を活用できますが、補助金や助成金を活用したとしても、必要な費用の一部を負担するだけに過ぎません。

福利厚生の助成金について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生を助成金で運用するのに向いている施策や制度とは?

福利厚生に使える資金が十分でないうちは法定福利厚生の提供だけは必ず行い、法定外福利厚生については会社の成長に合わせて順次導入を検討していくのが一般的です。

中小企業の福利厚生制度について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生が充実している中小企業とは?福利厚生のつくり方も解説

デメリット2.福利厚生の管理工数がかかる

福利厚生を導入する際に注意したいのは、検討対象の福利厚生にかかる実費用だけでなく、福利厚生を管理する費用もかかるという点です。

福利厚生を充実させて会社に制度が増えるほど、社内の管理工数が大きくなります。

福利厚生のアウトソーシングサービスを活用し、外部の会社に委託することで、社内の管理部門の負荷を減らすことは可能ですが、当然、外注すればその分の費用がかかります。

福利厚生のアウトソーシングについて知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生のアウトソーシングとは?市場規模と種類とメリットを解説

また、均衡待遇の原則を守るため、通常勤務の社員と異なる勤務条件の社員との合理的な待遇差の設定を検討する必要がありますが、福利厚生制度の全体の整合性を見る難易度は、福利厚生の充実度が高いほど上がるものと考えられます。

デメリット3.導入した福利厚生制度は廃止しにくい

予算の都合や時勢に合わないなどの理由で福利厚生制度を統合または廃止することがあります。

福利厚生は労働条件の一種であるため、制度の廃止などで社員の待遇が大きく変化するケースでは会社と社員の間での話し合い(労使交渉)が必要です。

よくある企業事例として、社員間の合理的な待遇差の是正のため、通常勤務の社員の福利厚生を引き下げるケースが見られますが、制度が廃止されて社員の利便性が下がれば従業員満足度は下がるため、推奨されない対応と言えます。

時勢の変化や利用率の低下など福利厚生を見直しに迫られた場合でも、社員の理解を得られる制度設計にする必要があります。

福利厚生の見直し方について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生の見直しはどう行う?時期とやり方について解説

3.主要な福利厚生の事例

主要な福利厚生制度の事例について、社員ニーズのあるジャンル別に、法定福利厚生と法定外福利厚生に分けて一覧でまとめると次のとおりです。

主要な福利厚生制度事例の一覧

ジャンル

法定福利厚生

法定外福利厚生

健康管理、メンタルヘルスケア

  • 定期健康診断
  • ストレスチェック
  • メンタルヘルスの相談窓口の提供
  • 産業医への相談窓口の提供
  • 人間ドックの受診奨励と費用補助
  • 病気休職制度など、治療と仕事の両立支援制度
  • 仮眠室や診療所の提供
  • スポーツクラブやジムの優待などの運動の奨励と費用補助
  • コーヒーブレイクやティータイム、フィーカなど15分程度の短時間休憩の奨励

休暇・余暇支援

  • 法定休暇(年次有給休暇、生理休暇、産前産後休暇、子どもの看護休暇、介護休暇、裁判員休暇など)

 

*余暇支援の法定福利厚生にあたる制度は特になし。

ただし、「社員旅行」など条件を満たす場合に税制優遇されるものあり。

【休暇】

  • 病気休暇制度
  • 慶弔休暇制度(忌引休暇、結婚休暇)
  • 有給休暇の日数の上乗せ、特別休暇の付与
  • 季節性の休暇(夏期休暇、冬期休暇など)
  • リフレッシュ休暇制度(長期勤続休暇制度)
  • その他特定の条件による特別休暇制度(誕生日休暇、アニバーサリー休暇など)

【余暇支援】

  • ブレジャー制度
  • ワーケーション制度
  • ノー残業デーなどの定時退社奨励
  • 社員旅行や社内交流イベントの実施と費用補助
  • 保養所や宿泊施設、レジャー施設などの優待
  • ネイルやエステなどの美容、整体やマッサージなどのリラクゼーション奨励と費用補助

手当や一時金(費用補助による家計の負担軽減含む)

  • 時間外手当・残業手当
  • 深夜労働手当
  • 休日出勤手当

*費用補助についての法定福利厚生は特になし。

ただし、「家賃補助」や「食事代補助」など条件を満たす場合に税制優遇されるものあり。

  • 住宅手当や家賃補助
  • 通勤手当
  • 食事手当や食事代補助などのランチサポート、社員食堂・カフェの提供
  • 慶弔見舞金制度(出産祝・就学祝)
  • 家族手当(扶養手当)や育児手当
  • 資格取得による一時金や手当の支給制度

仕事と生活の両立支援

【家族関連】

  • 育児休業制度
  • 介護休業制度

*「働き方」・「キャリアアップ」・「お金」に関する法定福利厚生は特になし。

ただし、「お金」に関する福利厚生は条件を満たす場合に税制優遇されるものあり。

また、「働き方」に関する福利厚生は、国の補助金や助成金を受ける上で有利に働く可能性あり。

【家族関連】

  • ベビーシッター派遣制度や託児所設置
  • 不妊治療支援制度や費用補助
  • 家事代行サービスの費用補助

【働き方関連】

  • テレワーク制度や在宅勤務制度
  • フレックスタイム勤務制度や時差出勤制度、短時間勤務制度
  • フリーアドレス制度や、サテライトオフィス・シェアオフィス・コワーキングスペースの活用など「働く場所」の選択肢の提供

【キャリアアップ支援】

  • キャリアアップ奨励制度(セミナー受講費用補助や、社内研修制度、資格取得時の報奨金制度、留学制度など)
  • 社内ベンチャー制度やビジネスコンテスト
  • ジョブローテーション制度
  • 副業制度
  • 役員とのランチミーティング
  • スポーツや文化活動など趣味のサークル、クラブ、部活動の奨励と費用補助

【お金関連】

  • 退職金一時金制度や確定給付企業年金制度、企業型確定拠出年金制度[企業型DC]、死亡弔慰金
  • 財形貯蓄
  • 持株制度
  • ストックオプション制度
  • 社販
  • 住宅ローンの相談窓口の提供

上の表で、社員ニーズのある福利厚生ジャンルとしてご紹介した「健康管理、メンタルヘルスケア」、「休暇・余暇支援」、「手当や一時金」、「仕事と生活の両立支援」は、厚生労働省の労働白書にある上位10つの傾向を独自に表現したものです。
参照:令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-(本文)全体版 図表1-3-35|厚生労働省

なお、福利厚生のトレンドについて知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生のトレンドは従業員個人の利益から企業を成長させる力へ

その他、上の表でご紹介している福利厚生の関連記事は次のとおりです。

関連記事リンク

概要

福利厚生の健康診断とは?種類や対象社員、経費の計上方法を解説

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  • 健康診断が法的義務である理由
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4.福利厚生についての一問一答

福利厚生についてのよくある質問・疑問に対し、一問一答形式で解説します。

Q1.福利厚生はパート・アルバイト等でも対象者になる?
Q2.福利厚生は会社役員でも対象者になる?
Q3.個人事業主でも福利厚生を用意する必要がある?
Q4.退職金は福利厚生にあたる?
Q5.産休や育休は福利厚生にあたる?
Q6.有給休暇は福利厚生にあたる?
Q7.在宅勤務は福利厚生にあたる?
Q8.「福利厚生なし」の会社はある?
Q9.大手企業なら「福利厚生がいい会社」と言える?

Q1.福利厚生はパート・アルバイト等でも対象者になる?

A1. Yes(パート・アルバイト等は福利厚生の対象者になる)

パート・アルバイト等の非正規労働者も、福利厚生の対象者です。

正社員と同等の勤務条件で働くパート・アルバイト等の非正規労働者に対し、福利厚生の差異がある場合、企業として説明する責任があります。

企業が用意できる福利厚生の財源にも限りがあるため、正社員と非正規労働者の間で福利厚生に差異が出ることは仕方がない部分はありますが、「同一労働同一賃金ガイドライン|厚生労働省」で例示される「不合理な待遇差」と判定される場合、是正する必要があります。

社員の種別と福利厚生について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
社員の種類で福利厚生が違うとどうなる?待遇差の見直し方法を解説

Q2.福利厚生は会社役員でも対象者になる?

A2. Yes(会社役員が福利厚生の対象者になるケースがある)

福利厚生は、すべての社員を対象にするため、経営者含めて会社役員も対象者に含まれます。

ただし、他の社員は利用できず、役員だけが利用できる福利厚生は、均等待遇の基本に反するため、認められません。

なお、小規模な親族経営の企業の場合、社員がおらず、役員しかいないケースがあります。経営者と会社役員は被保険者ではないため、社会保険などの法定福利厚生は原則、認められません。

法定外福利厚生については、国税庁が示す個々のケースごとに確認し、判断する必要があります。役員のみの企業で法定外福利厚生が認められないケースについては明記されています。

例えば、役員だけでの旅行が福利厚生の社員旅行として認められないことは、国税庁の注意書きの中で示されています。(参照:No.2603 社員レクリエーション旅行や研修旅行|国税庁)

Q3.個人事業主でも福利厚生を用意する必要がある?

A3. Yes(社員を雇えば法定福利厚生を用意する必要がある)

個人事業主でも、家族以外の社員を雇う場合、福利厚生を用意する必要があります。

法定外福利厚生は任意ですが、法定福利厚生は法律で義務付けられているため、必須です。

雇用形態を問わず1人でも雇えば、原則として労働保険(雇用保険と労災保険)の加入義務があります。(参照:雇用保険制度 Q&A~事業主の皆様へ~|厚生労働省)

個人事業主と福利厚生について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
個人事業主が福利厚生費で計上できる条件と基本をポイント解説

Q4.退職金は福利厚生にあたる?

A4. Yes(退職金制度は法定外福利厚生にあたる)

退職金制度には「退職一時金制度」、「確定給付企業年金制度」、「企業型確定拠出年金制度(企業型DC)」などがありますが、どれも会社が判断して提供する法定外福利厚生です。

ただし、経理上は福利厚生費ではない扱いになる可能性があるので、注意が必要です。

例えば、一般的な退職一時金は、社員への退職金の支給には「退職金」、引当金なら「退職給付引当金」の勘定科目で計上し、福利厚生費に計上されることはありません。

企業型DCについては次のコンテンツで詳しく解説しています。
企業型DCを導入する方法は?個人型DCや退職金制度との違いを解説

Q5.産休や育休は福利厚生にあたる?

A5. Yes(産休や育休は法定福利厚生にあたる)

産休(産前産後休業)や育休(育児休業)についての休業の許可と手当(育児休業給付金)の支給は、法律で義務付けられた法定福利厚生に当ります。

ただし、法で定められた基準を超え、産休や育休の休業サポートを手厚くする場合の差分は法定外福利厚生に当ります。

産休や育休を認めない、休業手当を出さない企業は違法ですが、企業ごとの育児休業の実態が掴みにくかったことから、育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律|e-Gov)が2021年に改正され、段階的に施行されます。
(参照:育児・介護休業法について|厚生労働省)

Q6.有給休暇は福利厚生にあたる?

A6. Yes(有給休暇は法定福利厚生にあたる)

有給休暇は法定福利厚生に当ります。パートタイムやアルバイトなど勤務形態に関わらず、要件を満たせば、企業は社員に有給休暇を付与する義務があります。

ただし、雇入れ日から起算した勤続期間や労働時間などによって、付与される法定有給休暇の日数は変わります。
(参照:労働基準行政全般に関するQ&A > 年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。|厚生労働省)

法で定められた有給休暇の基準を超えた有給休暇(特別休暇)制度を設定する場合は法定外福利厚生に当ります。

福利厚生における休暇について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生の休暇とは?種類から週休3日制まで基礎知識を解説

Q7.在宅勤務は福利厚生にあたる?

Q7. Yes(在宅勤務制度は法定外福利厚生にあたる)

自宅で勤務する在宅勤務制度やテレワーク制度は法定外福利厚生に当ります。

テレワーク勤務は働き方改革にて国に推奨されている福利厚生ではありますが、法律で提供義務が定められているものではありません。

福利厚生と働き方改革について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
働き方改革を推進する福利厚生とは?取組事例やポイントを解説

注意したいのは、在宅勤務の制度実施に必要な費用は多岐に渡るため、条件によっては「福利厚生費」にできないケースがある点です。

例えば、次のように在宅勤務に必要な費用は、原則、社員に貸与する場合は給与として課税されませんが、購入して支給して返却されないケース、社員以外や業務外の利用が考えられるケースは課税対象になります。

  • 在宅勤務手当
  • 在宅勤務に係る事務用品等の費用
  • 在宅勤務に係る環境整備に関する物品(間仕切り、カーテン、椅子、机、空気清浄機等)の費用
  • 在宅勤務に係る消耗品等(マスク、石鹸、消毒液、消毒用ペーパー、手袋等)の費用
  • 通信費と電気料金の業務使用分
  • 在宅勤務が行えないケースのレンタルオフィス代

参照:在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)|国税庁

また、在宅勤務に必要なものを社員が各自に用意できるよう、テレワーク手当として「一律支給」する場合は課税対象になり、経費にはできません。

通信費と電気料金の業務使用分は、指針にあるとおりの業務使用分の計算を行っての「実費支給」であれば、福利厚生費として計上できると考えられます。

オフィスを縮小し、交通費を取りやめる企業も出てきている中、交通費の代わりに通信費と電気料金の業務使用分を実費計算して会社負担とするケースもあるでしょう。

他にも、国税庁のFAQで示される「在宅勤務で業務を行う社員への昼食の補助」については、条件によっては給与として課税されないため、社食に代わる福利厚生費として計上できるものと考えられます。

在宅勤務やテレワーク制度について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
リモートワークを福利厚生に導入する方法と在宅勤務支援策を解説

Q8.「福利厚生なし」の会社はある?

A8. Yes(人を雇っていない会社、役員だけの会社は「福利厚生なし」があり得る)

原則、役員以外で人を雇用している場合、法律で義務付けられた法定福利厚生を提供する義務があります。

ただし、人を雇っていない会社、役員だけで構成される会社の場合には、法律上の「労働者」に当らず、労働基準法の対象外となるため、「福利厚生なし」でも問題ありません。

同じく、雇用契約を結ばずに賃金が発生しない「無償奉仕」の活動については「労働」に該当せず、労働基準法の対象外となるため、現在の法令では「福利厚生なし」となります。

しかし、無償ボランティアや、無給の短期インターン、職業訓練生などを事業に加える場合、民間の保険などで活動中の事故に備えるのが一般的です。

その他、福利厚生なしのケースについて知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生なしの会社はない?最低限必要な福利厚生を解説

Q9.大手企業なら「福利厚生がいい会社」と言える?

A9. No(大手企業が必ずしも「福利厚生がいい会社」とは限らない)

人によって福利厚生に求めるもの・重視するものが異なる以上、大手企業であれば「福利厚生がいい会社」とは限らないのが実状です。

ただし、統計上、事業規模が大きくなるほど福利厚生にかける費用が高く、制度や施策の数は多い傾向が見られるため、大手企業の福利厚生が中小企業に比べて手厚くなる傾向は事実としてあります。

福利厚生制度のラインアップが大手企業より劣る中小企業であっても、社会情勢や社員ニーズにあった福利厚生制度を揃えており、福利厚生制度の利用率が高いのであれば、社員にとっては「福利厚生がいい会社」とみなされるでしょう。

その他、福利厚生のいい会社の条件ついて詳しく知りたい方は関連記事をご覧ください。
福利厚生が良い会社とは?特徴や制度を解説

大企業の福利厚生について詳しく知りたい方は関連記事をご覧ください。
大企業が福利厚生を魅力的に見せるには?対策と導入事例を解説

(執筆 株式会社SoLabo)

生23-4624,法人開拓戦略室

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