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社員の種類で福利厚生が違うとどうなる?待遇差の見直し方法を解説

経営課題事例

2024-02-07

「社員の福利厚生」をテーマに、正規社員と非正規社員、社員の種類という理由だけで福利厚生の待遇差があるとどうなるのか、待遇差の見直し方について、経営者向けに解説します。

目次

福利厚生は、社員に対して「均等」に提供されるべき待遇のひとつです。

正規の社員と労働形態が異なるパート・アルバイトなどの非正規社員に対し、「同一労働・同一賃金」の原則を守り、労働条件や賃金の是正ができている企業であっても、待遇のひとつとしての福利厚生の見直しはできているでしょうか。

また「今、非正規社員がいないから、福利厚生の見直しは必要なさそう」というのは早合点です。

どんな雇用形態の社員がいてどんな福利厚生の実態があるのか、今後の雇用計画も加味し、社員の種類と福利厚生の実態を把握したうえで、福利厚生の合理的な判断基準を検討しておく必要があります。

社員の種別で福利厚生の傾向を把握し、福利厚生制度の不合理な待遇差を見直しましょう。

1.社員の種類だけで福利厚生が違うのは違法

まず、正規の社員とそれ以外の労働形態が異なる非正規社員について、「社員の種類が違う」という理由だけで福利厚生に違いがある場合、改正された働き方改革関連法による「均等待遇」の原則に反し、不合理な待遇差とみなされ、違法です。
参照:不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(業界別マニュアル)|厚生労働省

福利厚生に不合理な待遇差があっても法令上の罰則は定められていませんが、見直しせずに放置した場合、行政からの指導対象となるリスクや、民事裁判による損害賠償のリスクが生まれる可能性が考えられます。

なお、社員間で待遇差があること自体に問題がある訳ではありません。

社内リソースや福利厚生の予算にも限りがあるため、社員の能力や経験、職務の責任や権限、労働条件などで福利厚生に一律で待遇差をつけることは自然な措置であり、「合理的な待遇差」とみなされます。

ただし、福利厚生に待遇差がある場合、社員から合理性の説明を求められた場合、待遇差の詳細やその理由を説明する法的義務があります。

社員の種別と福利厚生の傾向

社員の種類

社員の特徴

福利厚生の傾向

正社員

企業と締結した定年までの雇用契約をもとに就業。

社員の種類の中で、役員の次に責任や権限が強く、福利厚生の待遇も充実している。

契約社員

企業と締結した有期雇用契約をもとに期間中のみ就業。

正社員と労働条件が近いため、同等ではないが、近い内容の福利厚生が提供される。

ただし、正社員と比べると、業務上の責任や権限が弱い分、手当など支給されない傾向がある。

派遣社員

派遣元と締結した雇用契約をもとに派遣先企業で就業。

雇用契約によって派遣元か、派遣先の福利厚生が提供される。

派遣先で福利厚生を提供する契約である場合、正社員と労働条件が近いため、同等ではないが、近い内容の福利厚生が提供される。

派遣元で福利厚生を提供する契約の場合、基本、派遣先企業の福利厚生は利用できないが、業務上の安全衛生面に直結する福利厚生は原則、提供される。

パート・アルバイト、臨時社員

企業と締結した短時間の雇用契約をもとに就業。

短時間かつ有期の雇用契約の場合、臨時社員と呼び分けるケースもある。

正社員と比べると、労働時間が短いうえ、責任や権限が弱い分、福利厚生の待遇は充実していない。

嘱託社員

企業と締結する一定期間の雇用契約をもとに就業。

定年後の再雇用制度がある場合、定年後の正社員が嘱託社員になる傾向が見られる。

正社員と労働条件が近い場合、同等ではないが、近い内容の福利厚生が提供される。

役員

企業の意思決定や事業経営の一端を担う。高い責任や権限に応じて賃金も高い。

福利厚生の待遇は正社員と同等が基本(福利厚生の基本原則「均等待遇」に基づく、税務上、役員だけの福利厚生は福利厚生と認められない)。

ただし、特別功労者など、役員専用の退職金制度があるケースもある(株主総会などの承認が必要)。

派遣社員は雇用契約によって福利厚生の適用が異なる

派遣社員の契約形態が「派遣先均等・均衡方式」なら、福利厚生を実際に働いている企業(派遣先)に合わせるため、他の従業員と同じように不合理な待遇差の是正と、求められた時の説明の法的義務が発生します。
参照:不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル~改正労働者派遣法の対応~(労働者派遣業界編) 2.労働者派遣法改正のポイントp.15|厚生労働省

ただし、人材派遣会社(派遣元)と労働契約を結ぶ派遣社員の場合、派遣社員の契約形態が「労使協定方式」であれば基本的に派遣元の福利厚生が適用されます。

ただし、「労使協定方式」で派遣元の福利厚生が適用するケースでも、派遣先が行う一部の教育訓練や福利厚生施設の利用など、そのまま安全管理や品質管理につながる福利厚生の場合、均等待遇・均衡待遇が求められます。

派遣社員と福利厚生について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
派遣社員が使える福利厚生の条件はどのように決まる?

2.社員の種類を考慮した福利厚生の見直し方

社員の種類による不合理な待遇差を見直すには、すべての福利厚生制度について「社員間に待遇差がある場合、合理的な説明ができるかどうか」を見極める必要があります。

次のとおり厚生労働省の資料「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(業界別マニュアル)」を参考に、福利厚生を見直しましょう。

  • 企業内に存在する「社員タイプ」を把握する
  • 現状の福利厚生の決定基準と待遇差の実態を整理する
  • 個々の福利厚生の「性質と目的」で合理性を検討する
  • 不合理な待遇差が確認された場合は是正する

参照先に、待遇差の是正の検討に役立つ「ワークシート」(EXCEL形式)が業界共通編とそれぞれの業界ごとでダウンロードできるようになっているので、ぜひ活用しましょう。

参照:不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(業界別マニュアル)|厚生労働省

*ワークシートの活用方法は点検・検討マニュアル内にも記載があります

記入例の引用:不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(業界別マニュアル)|厚生労働省

*ワークシートの活用方法は点検・検討マニュアル内にも記載があります

1.企業内に存在する「社員タイプ」を把握する

まず、企業内に存在する「社員タイプ」を把握します。

正社員、契約社員、派遣社員、パート・アルバイト、臨時社員、嘱託社員などの社員の種類はもちろん、役員職務内容や勤務条件で「社員タイプ」が変わります。

今後、雇用する予定のある社員タイプ等を含め、漏れのないようチェックします。

ワークシートを活用する方は記入例を参考にしながら「社員タイプの名称」欄を埋めましょう。
「第一段階サブシート【記入様式】」(p.68)で、社員タイプを比較して違いをまとめておくと、決定基準を見定めやすくなります。

2.現状の福利厚生の決定基準と待遇差の実態を整理する

続いて、社員タイプごとに現状の福利厚生の決定基準を把握し、待遇差の実態を整理します。

社員タイプごとに比較対象の従業員(通常は正社員)とセットで、労働契約期間の有期・無期、勤務形態の短時間・フルタイムなどの違いを一覧でまとめると検討を進めやすく便利です。

ワークシートを活用する方は記入例(p.66)を参考にしながら、福利厚生ごとに確認を進めましょう。

3.個々の福利厚生の「性質と目的」で合理性を検討する

個々の福利厚生の「性質と目的」とともに、比較対象の社員タイプの間で待遇差がある場合の内容と理由をまとめ、合理性を検討します。

ワークシートを活用する方は記入例を参考にしながら「第三段階A【記入様式】」(p.68)を埋めましょう。

福利厚生の待遇差が認められるものの、違いの根拠となる合理的な理由が出てこない場合、是正の必要がある福利厚生と言えます。

福利厚生の合理な待遇差と不合理な待遇差の例

福利厚生の例

合理的な待遇差(是正対象でない)

不合理な待遇差(是正対象)

効果的な滑り止めの付いた長靴の支給(現場の安全管理)

社員の種類に関わらず、床が滑りやすい現場で就業する社員に対して支給する。

床が滑りやすい現場で就業する正社員に支給する一方、パート・アルバイトには支給しない。

職務上の能力に応じた手当(役職手当)の支給

役職についている社員に支給されるが、役職についていない社員には支給されない。

役職についていても短時間勤務の社員には支給されない。

交代制勤務などの勤務形態に応じた手当(深夜労働、休日労働の特殊勤務手当)の支給

人員を確保し難しい早朝~深夜、土日祝日に就業する社員に対し、勤務実績に応じて一律で支給される。

社員の種別で手当の額が変わることなく、早朝~深夜、土日祝日に勤務しない社員には支給されない。

特殊勤務手当として正社員に支給する金額が高く、非正規社員は金額が低いとする社員の種類を根拠とした待遇差がある。

交通費実費の全額に相当する金額(通勤手当)の支給

所定労働日数の多い正社員や短時間・有期雇用の社員には、定期券の金額に相当する金額を支給する。

所定労働日数の少ない者、出勤日数が変動する社員には、日額の交通費に相当する額を支給する。

正社員には通勤手当が支給されるが、それ以外には支給されない。

正社員は通勤手当として全額補填されるが、非正規社員は補填割合が異なる。

社員食堂(社食)の利用や食事手当の支給

社員の種類関係なく、昼食の休憩時間のある社員は社員食堂を利用でき、食事手当が支給される。

午前中のみの勤務、午後のみの勤務など、労働時間の途中、昼食の休憩時間のないパート・アルバイトは社食を利用できず、食事手当を支給しない。

正社員は社食を利用できる一方、非正規社員は利用できない。

食事手当が正社員の方が額が多く、非正規社員は少ないなど社員の種類を根拠とする待遇差がある。

参照:同一労働同一賃金ガイドライン(厚生労働省告示第430号) 第3 短時間・有期雇用労働者4.福利厚生 p.13~15|厚生労働省

福利厚生の待遇差が合理的かどうかの判断は難しいため、厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」にある「問題とならない例」で示されるケースを参考に検討を進めましょう。

4.不合理な待遇差が確認された場合は是正する

手順にしたがって待遇差の是正検討を進め、不合理だと認められた福利厚生の待遇差は是正する必要があります。

ただし、不合理な待遇差の解消のために、比較対象にした社員の待遇を引き下げる対応は望ましいものではありません。

そもそも、合意なしに待遇の引き下げは行えないため、労働組合などの社員の代表との話し合いが必要になります。

また、「どういう要素をもとに待遇差が生まれているか」を把握し、合理的な待遇差へと改善する必要がありますが、特に福利厚生については厚生労働省の点検・検討マニュアルにも例が乏しいため、判断が難しいことが予測されます。

不合理な待遇差の改善は働き方改革の一端であるため、厚生労働省が全国47都道府県にある「働き方改革推進支援センター」での無料相談窓口や、電話・メールでの無料相談の利用を考えましょう。

なお、福利厚生の見直し方の基本として、見直しが必要な理由、見直すべき時期や具体的な見直し方法については次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生の見直しはどう行う?時期とやり方について解説

3.社員から福利厚生の待遇差の説明を求められたら

社員から「この待遇差はどういう合理性があるのか」という説明を求められた場合、福利厚生を提供する企業には待遇差の内容やその理由を説明する法的義務があります。

説明時に比較対象として勤務条件などが最も似ている正社員と比較した説明資料を用意し、口頭で説明するのが基本です。

福利厚生に待遇差がある場合、待遇差がある合理性が伝わるよう、資料に記載することが推奨されます。

なお、福利厚生だけを取り上げて説明を求められるケースは考えづらいので、基本給や賞与、各種手当など従業員の待遇全般をまとめて説明できるようにします。
参照:不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル~パートタイム・有期雇用労働法の対応~(業界共通編)4.待遇差の説明義務のポイント p.17-19|厚生労働省

また、「業界共通編」とは別に、厚生労働省は業界ごとの点検・検討用のマニュアルを用意しています。

スーパーマーケット業、食品製造業、印刷業、自動車部品製造業、生活衛生業、福祉業の方は上の参照先から業界別のマニュアルをご参照ください。

なお、派遣労働者への対応は「労働者派遣業界編」の参照が適切です。

*上の参照先の画面下から「労働者派遣業界編」のマニュアルや各種資料が参照できます

4.参考:社員の種類による待遇差解消の法的根拠

働き方改革関連法によって、勤務形態などの社員の種類に関わらず、「均等待遇」と「均衡待遇」が定められています。

まず「パートタイム・有期雇用労働法」で、短時間・有期雇用の従業員の給与や賞与、手当とあわせて福利厚生についても「均等待遇」と「均衡待遇」が定められています。
参照:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム・有期雇用労働法)|e-Gov

「短時間・有期雇用労働者」には、パート・アルバイトや契約社員、臨時職員なども含まれるだけでなく、元々は正規社員で短時間就業している者や再雇用の嘱託社員、異動のない勤務地域を限定した社員など「雇用形態の違う社員」も含まれます。

なお、派遣社員は「労働者派遣法」で「派遣労働者」として定義されるため、「短時間・有期雇用労働者」の定義には含まれません。
参照:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)|e-Gov

待遇差の是正が求められる代表的な福利厚生は、次のとおりです。

  • 福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)
  • 転勤者用社宅
  • 慶弔休暇
  • 健康診断に伴う勤務免除及び当該健康診断を勤務時間中に受診する場合の当該受診時間に係る給与の保障
  • 病気休職
  • 法定外の有給の休暇その他の法定外の休暇(慶弔休暇を除く)

引用:不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル~パートタイム・有期雇用労働法の対応~(業界共通編)図表 1- 12 ガイドラインで示されている福利厚生 p.22|厚生労働省

なお、不合理な待遇差の解消は「企業が付与している全ての福利厚生が対象」となるので、他にも福利厚生があれば別途、不合理な待遇差の是正検討が必要です。

不合理な待遇差を解消する必要のある福利厚生は、社販などの物品や福利厚生施設の提供はもちろん、キャリアアップや健康増進などを目的とした金銭的なサポート、フレックスタイム勤務制度やリモートワークなどの勤務条件の緩和施策なども対象になります。

福利厚生の基本と共に、福利厚生にはどんなものがあるか全容を知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生とは?定義やメリットを経営者向けにわかりやすく解説

(執筆 株式会社SoLabo)
(監修 株式会社SoLabo 田原 広一)

生23-4625,法人開拓戦略室

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福利厚生とは?定義やメリットを経営者向けにわかりやすく解説

「福利厚生とは」をテーマに据え、定義や分類、メリット・デメリット、主要な福利厚生制度の事例について経営者向けに解説します