記事サムネイル

福利厚生を助成金で運用するのに向いている施策や制度とは?

経営課題事例

2022-12-19

「福利厚生と助成金」とテーマに、助成金で福利厚生を運用するメリットとデメリット、助成金で運用できる福利厚生制度について、経営者向けに解説します。

目次

企業の福利厚生は主に収益を財源として運営しますが、条件を満たせば、国からの助成金を活用できるケースもあります。

福利厚生に助成金を活用する際は、国が奨励する内容で福利厚生制度を実施することになるため、メリットとデメリットをあわせて検討する必要があります。

福利厚生制度に助成金を活用したい経営者の方は、ぜひ最後までご覧ください。

1.福利厚生を助成金で運用するメリットとデメリット

まず、福利厚生を助成金で運用する一番のメリットを挙げると、条件さえ満たせば原則、助成金は支給されるお金であり、返済する必要がない、という点です。

事業利益を割かずに労働環境の改善につながる可能性があります。

助成金そのものが恒常的に設置される傾向があり、助成金はひとつの年度で一回までの支給を原則としますが、同じ事業者が同じ助成金に翌年度、翌々年度と何度でも申請できる点も、安定した福利厚生制度の運用につながるため、利点と言えます。

また、国の助成金の支給条件には、助成対象の福利厚生についての計画書の提出が含まれるため、助成金を支給しているという事実によって、従業員の待遇を計画的に整えている企業とみなされ、社会的な信用を得やすくなる側面もあります。

福利厚生を助成金で運用するデメリットとしては、助成金に関わる計画立案や申請書類作成、手続きに労力が必要である点です。

また、助成金の制度内容の理解不足で「実は自社が対象ではなかった」などで徒労に終わるケース、申請した際に書類不備で受付けられないケース、申請内容に虚偽があり、不正受給と判断されると支給されたお金を返還しなければならないケースなどあるため、注意が必要です。

なお、助成金は恒常的に設置されている傾向はありますが、社会情勢にあわせて助成金がなくなったり、制度内容や支給対象が見直されたりすることがあります。

助成金頼りで福利厚生を運営すると、助成金の支給が受けられなくなったために福利厚生制度を取りやめるなど、自社の福利厚生制度全体をその変化にあわせて見直さなければなりません。

福利厚生は安定的に従業員に提供し続けることにより、メリットを最大化できるものであるため、助成金の支給に左右されることのないように運用する方が望ましいでしょう。

なお、企業が福利厚生を提供するメリットについては次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生のメリットとデメリットを経営者の視点で解説

そもそも助成金とは?補助金との違い

助成金も、補助金も、国から事業者に給付されるお金のことですが、根拠とする法律が異なります。

助成金は「雇用保険法|e-Gov」で定められています。詳細は「雇用保険法施行規則」内にあり、例えば仕事と生活の両立支援の福利厚生に活用できる「両立支援等助成金」は第百十六条で定められています。

一方、補助金は「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(補助金適正化法)|e-Gov」で定められています。

また、一般的に、助成金は雇用や労働環境を司る厚生労働省系列の企業支援において使用され、補助金は日本経済を司る経済産業省系列の事業支援において使用されます。

補助金は福利厚生に活用できない?

補助金による福利厚生への活用は不可能ではありませんが、助成金に比べると安定的に資金を得る確実性が乏しいため、よく検討する必要があります。

理由は、補助金は申請後に審査を通る必要があり、申請すれば受け取れるものではない点です。

補助金を福利厚生に活用できそうなケースも中にはあり、例えば、補助金の事業計画に必要な人材育成という位置付けで申請することは可能です。

また、それぞれの補助金制度が恒常的にあるものでもなく、回ごとに申請条件が変わることが通例であるため、補助金の活用を前提にした福利厚生の運用は難しいと言えるでしょう。

2.助成金に対応する福利厚生制度例の一覧

福利厚生のために利用できる助成金と、助成金に対応した福利厚生制度にどのようなものがあるか、一覧にして解説します。

なお、本記事では企業の事業分野や特性を問わず、汎用性のあるものを中心に取り上げますが、この他に助成金を探す場合は、次のサイトを活用できます。
参照:雇用関係助成金検索ツール|厚生労働省

助成金に対応する福利厚生制度例の一覧

助成金の名称

活用できる福利厚生制度や施策

キャリアアップ助成金(正社員化支援)

非正規社員(有期雇用労働者)に対する従業員の研修や教育の実施

キャリアアップ助成金(賞与・退職金制度導入コース)

有期雇用労働者等を対象に、賞与・退職金制度を導入し支給または積立てを実施

人材確保等支援助成金(テレワークコース)

テレワークやリモートワークを導入・運用に活用

両立支援等助成金(出生時両立支援コース)

主に男性従業員の育休を推進する福利厚生の制度や施策に活用

両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)

要介護者の介護が必要になった従業員の離職を防ぐ福利厚生の制度や施策に活用

両立支援等助成金(育児休業等支援コース)

従業員の育児を推進する福利厚生の制度や施策に活用

両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)

不妊治療する従業員をサポートする福利厚生の制度や施策に活用

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、非正規社員の「正社員化」や処遇改善に取組む事業主を助成するものです。

表で挙げた福利厚生に関するもの以外にも、給与などの賃金規定の待遇を改善する助成金もあるため、詳細は厚生労働省の公式ホームページで確認してください。
参照:キャリアアップ助成金|厚生労働省

なお、社員の種類によって福利厚生に不合理な待遇差が見られる場合、是正する必要があるので、注意が必要です。

社員から待遇差の説明を求められた場合、企業側に説明する義務があるため、待遇差が不合理でないか、よく把握し、福利厚生制度全体を見直す必要があります。
参照:不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル~パートタイム・有期雇用労働法の対応~(業界共通編)

社員の種類と福利厚生の考え方については次のコンテンツで詳しく解説しています。
正社員の福利厚生と待遇差がある従業員がいるときに必要な対応とは?

人材確保等支援助成金

人材確保や定着を目指す事業主に対して助成される「人材確保等支援助成金」は、福利厚生向けの助成金と言えます。

ただし、事業分野が限定されていたり、人気あるコースの新規受付が休止されたり、廃止されたりするケースが見られるため、きちんと情報を確認する必要があります。
参照:人材確保等支援助成金のご案内|厚生労働省

両立支援等助成金

「両立支援等助成金」は、従業員の生活と仕事の両立を支援する事業主を助成します。
参照:事業主の方への給付金のご案内 ー 仕事と家庭の両立支援に取り組む事業主等のみなさまへ|厚生労働省

それぞれコースによって助成する対象が異なるため、特徴ある福利厚生制度や施策の財源になる可能性が高いと言えます。

(執筆 株式会社SoLabo)

生22-5524,法人開拓戦略室

関連記事

記事サムネイル

福利厚生のメリットとデメリットを経営者の視点で解説

「福利厚生のメリットとデメリット」をテーマに、法定福利厚生と法定外福利厚生のメリットとデメリット、具体的な制度のメリットとデメリットについて...

記事サムネイル

社員の種類で福利厚生が違うとどうなる?待遇差の見直し方法を解説

「社員の福利厚生」をテーマに、正規社員と非正規社員、社員の種類という理由だけで福利厚生の待遇差があるとどうなるのか、待遇差の見直し方について...