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会社の弔慰金とは?定義や相場、非課税金額の計算方法を解説

経営課題事例

2023-10-26

「会社の弔慰金」をテーマに、会社が支給する弔慰金の定義や相場金額、死亡退職金などを含めた非課税金額の計算例について、経営者向けに解説します。

目次

会社における弔慰金は、もしものときに社員の遺族の生活を保障する福利厚生の一種です。

本記事では、相場の金額、渡し方や渡すタイミングなども含めた「会社の弔慰金」の基本を、経営者の方向けに解説します。

弔慰金は、死亡退職金や香典、ケースによっては退職慰労金などとあわせて遺族に渡すケースも見られます。

経理上、どのような扱いをするものか、非課税限度額の計算方法についても押さえましょう。

なお、弔慰金には、会社法人が社員に支払うケースだけでなく、戦争や災害時に国が国民に対して支払うケースもあり、会社のケースに限定しない一般的な弔慰金については次のコンテンツで詳しく解説しています。
弔慰金とは?意味や類語との違いを解説

1.会社における弔慰金とは?

会社における弔慰金とは、正確には「死亡弔慰金(しぼうちょういきん)」と呼ばれるもので、社員本人が亡くなった際に遺族に対して、あるいは社員の家族が亡くなった際に社員に対して会社が支給する一時金や、それに関連する花輪代・葬祭料等がかかる贈り物、それらを規定する福利厚生制度そのものを指します。

弔慰金は会社が用意する法的義務のない法定外福利厚生であるため、会社ごとに弔慰金の支給条件は異なります。

慶弔見舞金の一種であり、弔慰金の詳細は就業規則の慶弔見舞金規程などで定めることが一般的です。

会社の慶弔見舞金制度については次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生の見舞金とは?慶弔災害の種類と相場と制度導入する方法

社員や遺族に対する弔慰金を渡すタイミングと渡し方

弔慰金は会社の内部留保(事業利益として蓄えられるお金)や保険等から出し、社内規程にしたがって葬儀・告別式の後に渡します。

また、社員本人が亡くなったケースと社員の家族が亡くなったケースでも、弔慰金を渡すタイミングが異なります。

  • 社員本人が亡くなった場合:葬儀・告別式の後に社員の遺族に渡す
  • 社員の家族に不幸があった場合:忌引き明けに社員に渡す(社員本人による忌引き申請と連動するケース)

弔慰金を渡す際は社員の遺族または社員本人への連絡が必要です。自宅で固定電話を利用しない人もいるため、社員に万一のことがあったときのために緊急連絡先を控えておく必要があります。

なお、会社の弔慰金の渡し方は、会社によって次のケースが考えられます。

  • 弔慰金を現金で封筒に入れ、手渡しする
  • 弔慰金を指定住所に現金書留で送る
  • 弔慰金は指定口座に振込み、目録を入れた封筒を手渡しする
  • 弔慰金は指定口座に振込み、目録を入れた封筒を現金書留で送る

社内規程に渡し方の指定がない場合、会社から弔慰金を渡す際の細かなルールは、担当部署が明文化しておくと対応がスムーズに行えます。

また、弔慰金の金額の大小に限らず、現金より、振込を利用した渡し方が盗難や紛失のトラブルを避けられます。

弔慰金の渡し方の詳細については次のコンテンツで詳しく解説しています。
弔慰金の渡し方のマナーとは?かける言葉と渡すタイミングを解説

会社の弔慰金と香典の違い

故人を悼むために香の代わりに霊前にお供えする金銭が「香典」ですが、「会社からの香典」となる場合、会社に属する役員や社員が自費を出し合い、代表者がまとめて葬儀や告別式の際、弔意とともに喪主に手渡す金銭を指します。

会社の弔慰金と比較してまとめると、次のとおりです。

会社の弔慰金と香典の違い

会社の弔慰金

種類

会社からの香典

会社の内部留保や保険など「会社のお金」から出す

金銭の出どころ

社員有志が自費を出し合う

葬儀・告別式の後に、社内規程で決められた担当者が、遺族に渡す(社員の縁の深さ等は問わない)

渡し方

社員の直属の上司など、亡くなった社員と縁のある代表者が、遺族に渡す

葬儀や告別式を終えた後日

渡すタイミング

葬儀や告別式の当日

なお、遺族のみで行うような小規模な葬儀が一般化したことにより、葬儀の場に会社の代表者が参加できないケースでは、後日喪主の自宅に伺って香典を渡すケースや現金書留で香典を送るケースも見られます。

また、香典として金銭を受取る際の遺族の手間や社員間の金銭トラブルを避けるため、線香セットなどの物品を贈り、社員一同のお悔やみの気持ちを表すケースも見られます。

他にも、会社からの香典に対しては香典返しをしない・香典返しがあっても受取らないなど、香典扱いについて社内規程を定める例もあります。

2.会社の弔慰金の相場金額

会社における弔慰金は、社員が亡くなった際の遺族へのお悔やみと生活保障の意味合いが強い福利厚生制度であるため、社員の死因が業務上のものであるか否かによって、相場も大きく変わります。

企業規模が大きく、勤続年数が長く、役職についているほど、給与がよい傾向があるため、弔慰金の社会通念上相当とされる非課税金額も大きくなります。

会社の弔慰金の一般的な相場感(死亡退職金と合算するケース含む)

  • 社員が業務上で亡くなった場合:100万円~5000万円
  • 社員本人が業務と無関係に亡くなった場合:20万円~3000万円

*企業規模、社員の勤続年数の長さ、役職の有無、団体保険の加入の有無等で相場があがる傾向あり

なお、社員が亡くなった際の弔慰金は高額になる傾向があることから、会社が保険に加入して備えるケースも少なくありません。

その他、死亡弔慰金の相場については次のコンテンツで詳しく解説しています。
会社からの死亡弔慰金の相場は?社員本人と家族のケースを解説

ちなみに、労災(労働災害)が適用されるような死亡事故で社員が亡くなった場合、遺族は労災保険による給付対象となりますが、この遺族補償給付は国が法律で定めた福利厚生であるため、会社の死亡弔慰金とは別物です。
参照:遺族補償給付(PDF)|厚生労働省

保険など、国が法律で定める福利厚生については次のコンテンツで詳しく解説しています。
法定福利厚生とは?種類や費用負担を解説

社員の家族が亡くなった場合の弔慰金

社員の家族が亡くなった場合に支給する会社の弔慰金は、その家族が社員とどのような関係性であるか、社員本人との関係の深さによって、相場金額が変わります。

例えば、社員の配偶者の弔慰金の相場は3万円~5万円ですが、子や父母などの社員と戸籍上、一親等までの家族弔慰金は1万円~3万円で少し相場が下がります。

社員と二親等離れた祖父母や兄姉妹弟などは会社の弔慰金の支給対象外とする傾向があり、同居や同棲など、その他の条件は考慮しないことが一般的です。

ただし、自治体によるパートナーシップ制度を利用しているなど「結婚に相当する関係」として公的に認められるパートナーに対して、会社によっては配偶者と同等の対応を行うケースもあります。

他にも、会社によってケースバイケースですが、中には戸籍上の関係性で判断せずに「従業員と同一世帯であること」の証明を条件に、一般的には支給対象外の二親等離れた家族や同居人、愛するペットを「家族」として捉え、弔慰金の支給対象にするケースもあります。

なお、社員の家族を対象とした弔慰金の福利厚生制度については、社員の申請が必要ですが、手続き方法は企業によって異なります。

  • 社員の家族の死亡届などの証明書を添付して社内の弔慰金申請の手続きをする
  • 社員の家族が亡くなった際、社員からの忌引き休暇等の申請を受けて一時金を用意する(忌引き休暇の申請と弔慰金の支給が内部で連動している)

3.会社の弔慰金の経理上の扱い

社員が亡くなった際に会社が支給する弔慰金は、社会通念上相当となる金額の範囲内であれば、福利厚生費に計上し、経理上は非課税として扱われます。

会社が遺族(被相続人)へ渡す弔慰金について「社会通念上相当」とみなされる非課税限度額は、次のとおりです。

(1)被相続人の死亡が業務上の死亡であるとき
被相続人の死亡当時の普通給与の3年分に相当する額

(2)被相続人の死亡が業務上の死亡でないとき
被相続人の死亡当時の普通給与の半年分に相当する額

一部引用:No.4120 弔慰金を受け取ったときの取扱い|国税庁

ただし、社員本人が亡くなった時の弔慰金等に相当する金額の非課税金額からの超過分は死亡退職金等として取扱います。

なお、会社が用意した弔慰金に対し、社員の遺族から金銭でのお返しをしたいと言われた場合、受取った際の経理上の処理が難しくなるため、辞退するように社内規程を定めるのが一般的です。

退職金制度がある会社は弔慰金の他に死亡退職金を支給する

福利厚生として退職金制度があり、就業規則に退職金規程が定められている場合、社員本人の死亡により遺族が会社から受取る一時金には弔慰金の他に、「死亡退職金」が含まれる可能性があります。

死亡退職金は、「死亡退職手当」や「死亡一時金」とも呼ばれます。

社員の遺族へのお悔やみと生活保障の意味合いが強い「死亡弔慰金」に対し、社員の老後を含めた生活設計に関わる退職金が元にある「死亡退職金」は、社員の功績を労う意味合いが強いと考えられます。

退職金の福利厚生制度にはいくつか種類がありますが、社員が在籍中に亡くなるなどの条件を満たした場合、遺族に対して一時金や年金が支払われる条項が含まれます。

  • 会社の内部留保で退職時に一時金を支払う「退職一時金制度」
  • 退職後に年金という形で退職金を支払う「確定給付企業年金制度」
  • 会社が掛金を積立て社員が運用して年金額や受取り方法を決める「企業型確定拠出年金制度(企業型DC)」

企業型DCについては次のコンテンツで詳しく解説しています。
企業型DCを導入する方法は?個人型DCや退職金制度との違いを解説

役員に対しては退職慰労金も支給するケースあり

役員が在職中に亡くなった場合の退任に際して、会社での功績が認められると株主総会で決議された場合、会社が「退職慰労金」を支給するケースがあります。

退職慰労金は役員退職慰労金規程がある会社において功績の認められた役員が、亡くなった時や退職する時に対して支払われます。

退職慰労金は退職金の一種としてみなされるものの、役員だけに支払われる性質上、福利厚生費には計上できませんが、損金に算入できます。

法人が役員に支給する退職金で適正な額のものは、損金の額に算入されます。その退職金の損金算入時期は、原則として、株主総会の決議等によって退職金の額が具体的に確定した日の属する事業年度となります。

引用:No.5208 役員の退職金の損金算入時期|国税庁

4.会社の弔慰金の非課税限度額の計算方法

会社の弔慰金関連の福利厚生制度は、遺族が受け取る際に非課税限度額になるような制度設計をすることが大切です。

その理由は、社員が健在で退職する際の退職金は所得税と贈与税の対象になる一方、社員が亡くなって遺族が死亡退職金を受取る場合は相続税と贈与税の対象になり、税の種類が変わるからです。

弔慰金と死亡退職金はそれぞれ非課税限度金額が定められており、会社の支給規程をその金額分に収まる範囲にすると「社会通念上相当の弔慰金」とみなされ、非課税になります。

遺族が受取る一時金の非課税限度額

種類

非課税限度額の計算式

死亡弔慰金

次の非課税限度額までは課税されない

 ・業務中に社員が亡くなったケース:亡くなった時の月給 × 36カ月(3年分)

 ・業務外に社員が亡くなったケース:亡くなった時の月給 × 6カ月(半年分)

*計算時の「月給」から賞与は除外される

死亡退職金

500万円×法定相続人数まで非課税

参照:No.4120 弔慰金を受け取ったときの取扱い|国税庁

なお、弔慰金の非課税限度額の金額を超えた分は、退職手当金等として取扱われます。

被相続人の死亡により相続人その他の者が受ける弔慰金、花輪代、葬祭料等(以下「弔慰金等」という。)については、3-18及び3-19に該当すると認められるものを除き、次に掲げる金額を弔慰金等に相当する金額として取り扱い、当該金額を超える部分の金額があるときは、その超える部分に相当する金額は退職手当金等に該当するものとして取り扱うものとする。

引用:〔退職手当金関係〕- (弔慰金等の取扱い)|国税庁

なお、退職金制度がないため、退職金を支払わず、非課税限度額を超過した弔慰金を支払うケースは「退職手当金等受給者別支払調書」の提出が必要になるので、注意が必要です。
参照:弔慰金名目での支給がある場合の「退職手当金等受給者別支払調書」の提出義務|国税庁

社員の遺族が弔慰金だけでなく、死亡退職金をあわせて受取った場合は高額になる傾向があり、税務処理によっては非課税となる金額を増やせるケースがあります。

では、それぞれ非課税となる上限額を参照し、以下の具体例を計算しましょう。

ここでは社員が亡くなった場合、社員の遺族に対し、会社の弔慰金と死亡退職金が贈られたケースについての計算例を挙げます。

なお、相続拒否した人がいる場合、法定相続人の人数から差引いて計算する必要があるので、注意が必要です。

会社の弔慰金と死亡退職金の非課税金額の計算例

ケース1

  • 社員(被相続人)が亡くなった当時の賞与を除いた月給:30万円
  • 死因:業務上の死ではない
  • 会社からの弔慰金:150万円
  • 死亡退職金:500万円
  • 社員の遺族(法定相続人):1人(配偶者のみ、実子なし)

まず、法定相続人の人数に関係のない、弔慰金の方の課税対象額を算出します。

業務外で亡くなっているケースであるため、月給30万円× 6カ月で計算し、弔慰金は180万円が非課税金額です。

受取った弔慰金は150万円なので、非課税の範囲を超えていないことがわかります。

死亡退職金は、法定相続人の人数に500万円をかけ合わせて計算するので、今回、配偶者のみの法定相続人が1人で、1人×500万円であれば、死亡退職金も非課税の範囲であるとわかります。

ケース2

  • 社員(被相続人)が亡くなった当時の賞与を除いた月給:50万円
  • 死因:業務上の死である
  • 会社からの弔慰金:1,500万円
  • 死亡退職金:1,200万円
  • 社員の遺族(法定相続人):2人(配偶者、子1人)

ケース2は業務上で亡くなったケースであるため、月給30万円× 36カ月で計算し、弔慰金は1,800万円が非課税金額です。

受け取った弔慰金は1500万円なので、弔慰金の非課税限度額の範囲内です。

死亡退職金の非課税限度額は法定相続人の遺族が2人で、500万円×2人で1,000万円です。

受け取った1,200万円では、死亡退職金の非課税限度額を超えていることがわかります。

上限を超えた200万円を弔慰金として税務処理すれば、どちらも非課税として扱うことが可能です。

以上のように弔慰金の非課税限度額について理解を深めた上で、会社の弔慰金制度の設計や運営をすることが求められます。

(執筆 株式会社SoLabo)

生23-3231,法人開拓戦略室

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