福利厚生として死亡弔慰金制度がある会社は少なくありませんが、会社が支給する金額の相場はご存知でしょうか。
死亡弔慰金は法律で定められた福利厚生ではないため、会社ごとにも異なりますし、故人が社員本人なのか、あるいは社員の家族であるか、によっても支給金額は変わってきます。
また、同じ会社で社員が亡くなったケースであっても、業務上の都合で亡くなったか否かでも相場は異なるものです。
本記事では経営者向けに、会社の死亡弔慰金の相場だけでなく、参考として会社から取引先への香典の相場なども解説します。
1.社員本人が亡くなった場合の死亡弔慰金の相場
死亡弔慰金は会社が独自で用意する福利厚生のため、金額については法律のように明確な決まりはなく、会社ごとの福利厚生制度によって支給条件が変わります。
会社の死亡弔慰金は、社員の死と業務の関連性以外にも、会社の規模や社員の勤続年数、役職や団体の保険の加入などの要素によっても、相場が変わります。
死亡弔慰金の相場が決まる要素
相場金額が高くなる |
要素 |
相場金額が安くなる |
社員の死が業務上で起こっている(例:業務中に事故に遭う) |
社員の死と業務の関連性 |
社員の死は業務とは無関係である(例:プライベートで出かけた先で事故に遭う) |
会社の規模が大きい(例:資本金額が10億円) |
会社の規模 |
会社の規模が小さい(例:個人事務所) |
社員が長く勤めている(例:勤続20年) |
社員の勤続年数 |
社員が勤めはじめて日が浅い(例:新入社員) |
社員が役職についている(例:部長職などの管理職) |
役職 |
社員が特に役職についていない(例:一般社員) |
死亡弔慰金制度の原資をまかなうために会社が団体保険に加入している |
団体保険の加入 |
死亡弔慰金制度の原資は事業資金の一部を割く |
上の表のように様々な要素で死亡弔慰金の相場が決まるため、一概に金額を挙げることは困難ですが、上限と下限は一般的には次の範囲に収まると考えられます。
会社の弔慰金の一般的な相場感(死亡退職金と合算するケース含む)
- 社員が業務上で亡くなった場合:100万円~5,000万円
- 社員本人が業務と無関係に亡くなった場合:20万円~3,000万円
ただし、会社の死亡弔慰金は「社会通念上相当とされる金額」までであれば非課税で福利厚生費として計上し、節税できることから、国税庁が指針を示す目安の金額が一般的な死亡弔慰金の相場の上限と考えられます。
死亡弔慰金の非課税限度額
次の非課税限度額までは課税されない
- 業務中に社員が亡くなったケース:死亡時の普通給与 ×3年(月給なら36カ月分)
- 業務外に社員が亡くなったケース:死亡時の月給 ×半年(月給なら6カ月分)
参照:No.4120 弔慰金を受け取ったときの取扱い|国税庁
なお、亡くなった際の普通給与は、給料や手当などの合計額を指し、賞与は含まれません。
また、死亡弔慰金において、非課税の範囲を超えた金額分については、退職手当金等に該当するものとして取扱われます。
「死亡退職金」含め、会社の弔慰金の詳細については次のコンテンツで解説しています。
会社の弔慰金とは?定義や相場、非課税金額の計算方法を解説
ちなみに、会社の死亡弔慰金の最大値と最小値の目安として、統計上の平均給与(*)をもとに、国税庁の非課税限度額を踏まえ、死亡弔慰金の相場金額をそれぞれ試算すると、次のとおりです。
(*)参照:令和3年分 民間給与実態統計調査「令和3年分調査結果」民間給与の実態調査結果(全データ/PDF)-(第12表)企業規模別の平均給与|国税庁
【最大値】大企業(資本金10億円以上)勤務の一般社員が亡くなったケース
ケース |
相場金額 |
算出式 |
業務中に亡くなる |
約1,700万円 |
5,664,000(円)×3(年)=16,992,000(円) |
業務外で亡くなる |
約280万円 |
5,664,000(円)×0.5(年)=2,832,000(円) |
*上の統計調査から、賞与を除く年給(平均給料・手当)の5,664,000円(資本金10億円以上・男性)の例を最大値として算出
【最小値】個人事業所勤務の一般社員が亡くなったケース
ケース |
相場金額 |
算出式 |
業務中に亡くなる |
約860万円 |
2,872,000(円)×3(年)=8,616,000(円) |
業務外で亡くなる |
約140万円 |
2,872,000(円)×0.5(年)=1,436,000(円) |
*上の統計調査から、賞与を除く年給(平均給料・手当)の2,872,000円(個人事務所・男性)を例を最小値として算出
なお、上の試算について、統計データの平均給料はあくまで平均であり、「会社が給与として費用計上した総額」を単純に所属する社員の人数で割って算出した数値である点にはご注意ください。
2.社員の家族が亡くなった場合の死亡弔慰金の相場
社員の家族が亡くなった際、社員の死亡弔慰金を支給する場合、「家族弔慰金」や「配偶者弔慰金」と呼ぶこともあります。
社員の家族が亡くなった際の死亡弔慰金は、慶弔見舞金の一部として制度運用されるのが一般的です。
会社の慶弔見舞金制度については次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生の見舞金とは?慶弔災害の種類と相場と制度導入する方法
なお、社員が亡くなった際の弔慰金制度を整えている会社でも、従業員の親族が亡くなった場合に死亡弔慰金を支給するかも含め、会社によって事情も支給条件も異なります。
次の表に示すとおり、「家族が社員とどのような関係性であるか」によって、死亡弔慰金の相場金額が変わる傾向があります。
社員との関係性 |
死亡弔慰金の相場 |
社員の配偶者 |
3万円~5万円 |
子や父母など、社員と一親等の家族 |
1万円~3万円 |
祖父母や兄弟姉妹など、社員と二親等離れる家族 |
5,000円~1万円 |
また、死亡弔慰金制度における家族の線引きは、会社ごとに様々で、パートナーシップ制度で認められたパートナーを配偶者として扱うケースや、同居するペットを対象にするケースも見られます。
3.参考 会社から取引先への香典の相場
取引先の関係者が亡くなった場合、死亡弔慰金ではなく、香典を出します。
なお、取引先への香典や花代などの見舞金は、社会通念上相当の金額であれば交際費に当ります。 参照:No.5262 交際費等と寄附金との区分|国税庁
会社から取引先へ香典を出す場合の相場は、亡くなった人の役職によって決まり、会社役員までの役職であれば5万円まで、代表取締役社長であれば5万円~10万円の範囲内に収めるのが一般的です。
なお、取引先の一般社員に対して弔意を示す場合、香典ではなく、線香や花などの物品で対応する傾向があるものと考えられます。
(執筆 株式会社SoLabo)
生23-3234,法人開拓戦略室