国や会社などから遺族に支給される「弔慰金」。
そもそも「弔慰金」とは何か、また慶弔金や香典、慰謝料などとの違いはご存知でしょうか。
本記事では一般的な弔慰金の意味や、類語との違いについて解説します。
1.一般的な弔慰金の意味
弔慰金とは、正式には「死亡弔慰金(読み方:しぼうちょういきん)」と呼ばれるもので、国や会社などのコミュニティに所属する方が戦争や災害、業務上の事故などで死亡した際、遺族に対して、弔意や生活保障の趣旨で支給される金銭、あるいはその制度の名称を指します。
つまり、弔慰金には国が支給する弔慰金と、会社などの組織が支給する弔慰金の2種類に分かれます。
まず、国が支給する弔慰金は、次のような法律で、対象や支給条件などが定められています。
参照:戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法|e-Gov
参照:災害弔慰金の支給等に関する法律|e-Gov
戦争によって亡くなった方(戦没者)の遺族に対して支給される弔慰金と、災害で亡くなった方の遺族に対して支給される弔慰金では法律が異なり、金額や支給条件もそれぞれ異なります。
一方、会社が支給する弔慰金は、それぞれの会社の就業規則の慶弔見舞金規程などによって定められているため、会社ごとに弔慰金の金額や支給条件が異なります。
会社によっては、慶弔見舞金規程以外にも、社員本人が亡くなった際に支払われる「死亡退職金」や、亡くなった方が役員であれば「退職慰労金」も含め、弔慰金の制度設計をしています。
なお、会社が用意する弔慰金については次のコンテンツで詳しく解説しています。
会社の弔慰金とは?定義や相場、非課税金額の計算方法を解説
弔慰金は原則、贈与税や相続税が非課税
国からの弔慰金は原則、贈与税や相続税が非課税です。
会社の弔慰金についても、贈与税や相続税がかからない社会通念上相当と認められているものとして非課税限度額が国税庁から示されています。
会社の弔慰金制度は基本的には非課税になるように計算して制度設計されています。
なお、国税庁が示す弔慰金の指針として、次の非課税限度額まで非課税です。
- 業務中に社員が亡くなったケース:亡くなった時の月給 × 36カ月
- 業務外に社員が亡くなったケース:亡くなった時の月給 × 6カ月
*ただし、計算時の「月給」に賞与は除外される
参照:No.4120 弔慰金を受け取ったときの取扱い|国税庁
慶弔金や見舞金との違い
慶弔金は、正式には「慶弔見舞金(読み方:けいちょうみまいきん)」と呼び、原則、会社が社員やその家族の祝い事(慶事)や不幸(弔事)などの冠婚葬祭の際に渡す金銭、またはその福利厚生制度を指します。
会社によって、社員本人が死亡した際に遺族へ支給する弔慰金だけでなく、社員の家族が死亡した際には慶弔見舞金として弔慰金を支給する福利厚生制度を用意している場合もあります。
なお、会社の福利厚生としての慶弔見舞金については次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生の見舞金とは?慶弔災害の種類と相場と制度導入する方法
慶弔金(慶弔見舞金)とは別に、災害などで障害を受けた際に受取る金銭について表す一般的な言葉としての「見舞金」があります。
例えば、国が災害により死亡した者の遺族に対して支払う災害弔慰金について定める同じ法律では、精神や身体に著しい障害を受けた者に対しては「災害障害見舞金」を支給するように定めています。
「災害により死亡した者の遺族に対して支給する災害弔慰金」
「災害により精神又は身体に著しい障害を受けた者に対して支給する災害障害見舞金」
カッコ内一部抜粋:災害弔慰金の支給等に関する法律|e-Gov
香典との違い
香典(読み方:こうでん)は故人と関係のある個人が自費で弔意とともに葬儀や告別式の当日に渡しますが、弔慰金は国や会社などの組織・団体が公金や内部留保(事業利益として蓄えられるお金)、保険等によって費用を出し、葬儀や告別式の後に渡されるという点で異なります。
なお、香典は社会通念上、相当の金額であれば非課税です。
参照:第2節 贈与税 第21条の2 《贈与税の課税価格》関係(社交上必要と認められる香典等の非課税の取扱い)|国税庁
なお、弔慰金も原則、非課税の範囲内で制度設計される傾向がある点は、香典と共通します。
ただし、香典も弔慰金も、社会通念上相当とされる上限を超えると課税対象になるので、注意が必要です。
慰謝料との違い
慰謝料(読み方:いしゃりょう)は、一般的に、不法行為によって権利を侵害され、精神的な苦痛を受けた人に対して損害賠償として支払う金銭を指します。
古くは「慰藉料」とも書きますが、慰謝料と同じ言葉です。
なお、社員が業務上で亡くなったケースでは、弔慰金は遺族の受けた精神的な苦痛に対する損害賠償的な意味合いも含みますが、会社によっては業務外で社員が亡くなったケースや社員の家族が亡くなったケースなど、会社が直接的に関与しない場合にも弔慰金を支払う可能性がある点が異なります。
2.弔慰金を受取るには?
国の弔慰金は国の公金から出されるものであるため、それぞれ法律にしたがって対象者に渡されます。
国の弔慰金を受取るには、原則、受給対象の条件を満たした者が請求窓口へ手続きを行い、受給権を得る必要があります。
なお、次の参照先の例のとおり、国の弔慰金の請求には期限があります。期限を超えると時効になるため、請求が行えない点で注意が必要です。
参照:戦傷病者及び戦没者遺族への援護|厚生労働省
一方、会社の弔慰金は会社の内部留保(事業利益として蓄えられるお金)や加入した団体保険等から出されるものであるため、社内規程にしたがって渡されます。
弔慰金規程がある会社で、社員本人が亡くなった際は、葬儀・告別式の後に遺族に弔慰金を渡し、社員の家族が亡くなった際は、忌引明けに社員本人に弔慰金を渡すのが一般的です。
会社の弔慰金の渡し方の詳細については次のコンテンツで詳しく解説しています。
弔慰金の渡し方のマナーとは?かける言葉と渡すタイミングを解説
なお、会社の弔慰金の場合に社員の遺族が申請等を行うことはなく、訃報を受けて担当の社員が対応するのが一般的と考えられますが、弔慰金の福利厚生制度の仕組みが外部のサービスで賄われる場合は、会社からの案内を受け、遺族が手続きする可能性があります。
また、社員の家族が亡くなった際は、社員は死亡届等の証明書とともに社内の申請手続きを行うことが一般的です。
社員本人が亡くなった場合の弔慰金は高額になる一方、社員の家族が亡くなった場合の弔慰金は1万円~5万円ほどの「気持ち」程度の額になる傾向があります。
なお、会社の弔慰金の相場については次のコンテンツで詳しく解説しています。
会社からの死亡弔慰金の相場は?社員本人と家族のケースを解説
(執筆 株式会社SoLabo)
生23-3967,法人開拓戦略室