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福利厚生でマッサージを導入するには?経費や契約について解説

経営課題事例

2022-11-21

「福利厚生とマッサージ」をテーマに、福利厚生におけるマッサージとは何か、導入のメリットとデメリット、経費や契約などの運用面で検討すべきポイントについて、経営者向けに解説します。

目次

従業員の健康をサポートする福利厚生制度には、人材の定着や事業計画を安定に遂行する効果が見込めます。

従業員の健康をサポートするには、在宅勤務や時短勤務などで働く場所や働き方の選択肢を与えることによる「仕事と生活の両立支援」も有効ですが、健康的な社食やマッサージの提供などで直接的に身体に働きかける形で健康増進を促すのも有効です。

福利厚生でマッサージを扱う場合、法律で定義されているマッサージと、そうでないものの違いを認識した上で種類を決め、運用方法や契約形態を決めて導入する必要があります。

マッサージの福利厚生制度の導入を検討している経営者は、ぜひ最後までご覧ください。

1.福利厚生におけるマッサージとは?

福利厚生におけるマッサージは、従業員を慰労する目的で企業が費用を補助し、オフィスまたは提携契約した店舗でマッサージの施術を受けることを指します。

福利厚生のマッサージは、企業の判断で提供される法定外福利厚生であるため、マッサージの種類やサービス内容、施術を受ける場所については導入する企業ごとに異なります。

マッサージは法律で定義されている

マッサージは法律で定義されており、医師による医療行為を除く、疾病の治療や保険の目的で行われる「医療類似行為」を指します。

法律(*)で定められたマッサージは「あん摩マッサージ指圧」、「鍼(はり)」、「灸(きゅう)」、「柔道整復」の4種類があり、それぞれ施術には国家資格が必要です。
(*)参照:あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律|e-Gov

それ以外のマッサージに類するサービスは、専門団体による民間資格をもとに行われている傾向があります。

例えば、整体や整骨、カイロプラクティックなど民間療法、ハンドマッサージやフットマッサージなどのリフレクソロジー・リラクゼーション、フェイスマッサージのエステティック・美容施術が挙げられます。

法律で定義された4種のマッサージも、それ以外のマッサージも、従業員が受けられるように福利厚生制度として取り入れることができます。

マッサージ代の費用補助は福利厚生費で経費に計上できる

マッサージを福利厚生で導入する場合、全ての従業員が受けられるよう、慰労目的での福利厚生のマッサージサービスを用意するケースが一般的です。

福利厚生の原則である「均等待遇」に従い、全ての従業員が均等にマッサージを受けられる機会があり、「社会通念上相当」と思われる費用補助であれば、福利厚生のマッサージは福利厚生費として経費に計上できます。
参照:No.5261 交際費等と福利厚生費との区分|国税庁

例えば、医師の指示でマッサージや健康増進施設・運動療養施設を利用する費用を補助した場合、医療費補助として「社会通念上相当」と思われる金額であれば、福利厚生費として経費に計上できます。
参照:カフェテリアプランによる医療費等の補助を受けた場合|国税庁

また、事業内容にマッサージとの関連性が高い企業で、競合他社の調査を目的として従業員がマッサージを受ける場合、研修費やマーケティング費として経費に計上するケースもあります。

なお、福利厚生の原則など、基礎知識については次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生とは?定義やメリットを経営者向けにわかりやすく解説

2.マッサージの福利厚生を導入するメリットとデメリット

マッサージの福利厚生を導入するメリットは、従業員の健康増進はもちろん、生産性・モチベーション向上や離職率の低下などの副次効果が期待できることです。

デスクワーク中心の従業員は同じ姿勢を続けがちで、肩こりや腰痛などに悩まされる可能性が高いため、マッサージの福利厚生のニーズは高いものと推定されますが、従業員の勤務形態(リモートワーク・オフィス勤務)によっては、ニーズがあっても気軽にサービスを受けられないといった不公平感の出る点はデメリットを言えます。

また、マッサージの施術費用や運用管理などによる社内リソースのひっ迫も予想されます。

その他にも、マッサージは直接、身体に触り、影響を及ぼす行為であるため、有効性とともに危険性があり、従業員への健康を害するリスクをはらみます。

企業としてマッサージの種類の選び方や、従業員の持病とマッサージの相性によっては、従業員への健康被害につながる可能性は考慮する必要があります。
参照:医業類似行為に対する取扱いについて|厚生労働省

一般的に、マッサージサービスの利用前に「利用を控えた方がよい病歴」などを含めた注意事項を提示し、確認するプロセスを経るのは、医師とマッサージ4種のいずれかの国家資格を持つ者以外は、既往症や病状などを聞く「問診」を行ってはいけないからです。
参考:刑集 第27巻8号1403頁(最高裁判所第一小法廷 昭和48年9月27日):医師法違反、薬事法違反 - 最高裁判所判例集|裁判所 - Courts in Japan

最終的にはマッサージを利用するかどうかは従業員の自己判断になりますが、問診のできる国家資格の持つマッサージ施術者を選ぶことで一定のリスクヘッジになります。

3.マッサージの福利厚生制度を導入する方法

福利厚生制度としてマッサージサービスを導入する方法は次のとおりです。

  • 福利厚生に採用するマッサージの種類を決める
  • マッサージの福利厚生サービスの運用を決める
  • マッサージの福利厚生サービスとしての契約を結ぶ

なお、マッサージ以外の福利厚生も導入することを検討している場合は、マッサージを含む福利厚生のアウトソーシングサービスを利用し、カフェテリアプランのひとつとして導入する方法もあります。

福利厚生の代行(アウトソーシング)については次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生のアウトソーシングとは?市場規模と種類とメリットを解説

1.福利厚生に採用するマッサージの種類を決める

従業員の健康を害する可能性をはらむマッサージは、施術内容と施術者が信頼できるかが重要な要素です。

なお、マッサージの施術を行う者には、国家資格の免許を持つ者、国家資格の免許と民間資格をあわせ持つ者、民間資格のみで活動する者、無資格で活動する者がいます。

民間療法のマッサージを検討する場合、まず「マッサージそのものが、有効性と危険性が証明されているか」を確認し、そのマッサージの専門団体の資格付与の基準が信頼できるかを確認し、民間資格を持っている活動する施術者を探して契約する、という手順を踏むことになります。

福利厚生のマッサージには、施術行為の範囲が法律で定められ、免許を持たない者は施術できない仕組みになっている「あん摩マッサージ指圧」、「鍼(はり)」、「灸(きゅう)」、「柔道整復」に類するものから選ぶのが妥当と言えます。

厚生労働省が注意喚起しているように、マッサージの効果を必要以上に強調しない者を信頼しましょう。

2.マッサージの福利厚生サービスの運用を決める

マッサージの種類が決まったら「従業員がマッサージの施術をどこで受けるか」などを含め、福利厚生サービスの運用方法を検討します。

マッサージの福利厚生サービスの運用形態

運用形態

概要

備考

拠点出張型

オフィスなどの拠点に、マッサージの施術者が出張して福利厚生サービスを提供する。

福利厚生費として経費にしやすい傾向がある。

マッサージのサービス利用できる日を設定し、効率的な運用ができる。

拠点で施術場所を設けることで従業員が利用しやすいが、在宅勤務者が多いと利点が薄い。

拠点のどこかにマッサージ施術が行える場所を作る必要がある。

社内常駐型

オフィスなどの拠点に、マッサージの施術者が常駐して福利構成サービスを提供する。

福利厚生費として経費にしやすい傾向がある。

拠点で施術場所を設けることで従業員が利用しやすいが、在宅勤務者が多いと利点が薄い。

利用者が少ない場合、サービス提供に無駄が発生する。

拠点のどこかにマッサージ施術が行える場所を作る必要がある。

来院型

従業員がマッサージの施術者がいる場所に来訪し、福利厚生サービスを受ける。

福利厚生費として経費にしづらい傾向があるが、福利厚生の原則「均等待遇」を強調する狙いで、特定のサービス内容を指定すると処理しやすい。

福利厚生のアウトソーシングサービスにおけるカフェテリアプランのメニューの1つとして利用される傾向がある。

自宅出張型

従業員の自宅に、マッサージの施術者が出張し、福利厚生サービスを提供する。

福利厚生の原則「均等待遇」と「社会通念上相当」のサービスを設計しづらく、福利厚生費として経費にしづらい。

マッサージサービス料の他に、都度出張費用がかかるために総額が高額になる傾向がある。

マッサージ代金はマッサージの種類や運用方法などによっても様々ですが、企業として費用補助額を福利厚生費として経費に計上するには、福利厚生の原則として「社会通念上相当」の金額である必要があります。

企業の福利厚生の予算との兼ね合いや、企業が負担する割合などを含め、制度が破綻しない額と利用回数制限などを設計する必要があります。

なお、独自性のある福利厚生制度を求めている方は、マッサージの施術場所の「拠点」をサテライトオフィスやシェアオフィス、研修施設に指定し、出張や研修などの業務都合の移動を活用して余暇を楽しむ「ブレジャー制度」と組合せると、ユニークな福利厚生が生まれる可能性があります。

福利厚生のレジャーやブレジャー制度については次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生のレジャーの位置付けはブレジャー制度で変わる?

3.マッサージの福利厚生サービスとしての契約を結ぶ

マッサージの種類や運用方法が決まったら、福利厚生サービスとしての契約を結びます。

福利厚生費として計上するには福利厚生の原則として「均等待遇」である必要があるため、マッサージをする方法やメニューを指定し、全従業員が同じサービスを受けられるように設計する必要があります。

従業員の要望でサービスメニューを追加や変更した場合、会社の費用補助対象外になることを踏まえ、マッサージサービスの提供側と契約内容をよくよく検討してから合意する必要があります。

福利厚生制度として社内に周知し、就業規則の変更届を出せば、マッサージの福利厚生制度がスタートできます。

(監修 株式会社SoLabo 田原 広一)

生22-5319,法人開拓戦略室

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