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人事評価制度の作り方を解説「導入目的」と「公平感」が成否をわける

経営課題事例

2024-05-09

「人事評価制度の作り方」について経営者向けに解説します。

目次

会社が社員を評価する「人事評価制度」は、適切な設計と運営が行われれば、社員の育成を促し、最終的に会社の成長につながる仕組みです。

しかし、会社の成長につながるような人事評価制度は、一朝一夕に作れるものではありません。人事評価制度の「導入目的」をしっかり決め、「公平感」のある仕組みにする必要があります。

本記事では人事評価制度の作り方について手順ごとにポイントを解説し、配慮したい社会情勢やトレンドもあわせてご紹介します。

1.人事評価制度の作り方

人事評価制度の作り方は次のとおりです。

  • 自社における人事面の課題を把握する
  • 人事評価制度の導入目的を定める
  • 等級制度や報酬制度など他の人事制度との関わりを決める
  • 人事評価制度の評価項目・評価基準を決める
  • 人事評価の結果についての待遇への反映方法を規定する
  • 人事評価を行う幹部社員を教育する
  • 一般社員に周知し、運用を開始する
  • 導入した制度の振返りを定期的に行う

1)自社における人事面の課題を把握する

まず、人事評価制度がない状態での自社における人事面の課題を把握する必要があります。

一般的に、人事評価制度がない会社で見られる人事面の課題は次のとおりです。

人事評価制度がない会社の人事面での課題例

人事評価制度がない会社の特徴

人事面の課題

社員一人一人の働きぶりが経営方針に沿っているかを確認する方法がない。

社員に業務上の言動に影響するほど、経営方針が浸透しているかを確認できない。

社員の持つ能力やスキルを把握できていない。

適材適所の人材配置ができない。どんな人材が必要なのかがはっきりしないため、適切な採用活動が行えない。

社員の成長は社員個人の裁量に委ねる。

会社として積極的に人材育成する社風がなく、仕事が属人化しやすい。

社員が「自分は会社に適切に評価されていない。必要とされていない」と感じており、会社への愛着を持たない。

社員の仕事に対するモチベーションが低い。社員が離職しやすい。

2)人事評価制度の導入目的を定める

続いて、洗い出した課題を踏まえ、人事評価制度の導入目的を定めます。

設定した導入目的は、主に次の3つの役割のために利用します。

  • 人事評価制度を作る際に、評価項目・基準など詳細を決める判断基準として活用する
  • 社内に「人事評価制度がなぜ必要か」を周知する
  • 人事評価制度を形ばかりのものにさせないため、従業員満足度調査後の会社の人事制度の振返りの際の指針として活用する

導入目的は人事評価制度を作る時の指針にするだけでなく、「人事評価制度の必要性」を社内に伝える際に活用できます。

なお、人事評価制度は社員の仕事のモチベーションを高めた結果、従業員満足度や顧客満足度を高め、業績の向上を見込める可能性がある仕組みです。

人事評価制度の導入に際して理論的な裏付けが必要なら、導入目的に盛り込んでもよいでしょう。

従業員満足度と顧客満足度の相関関係について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
従業員満足度と顧客満足度の相関関係とは?

3)等級制度や報酬制度など他の人事制度との関わりを決める

人事評価制度を導入する場合、社員の序列をつける「等級制度」と、給与・手当・賞与・退職金などの待遇に反映する「報酬制度(賃金制度)」とセットで検討することが一般的です。

人事評価制度の種類について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
人事評価制度とは?種類と活用ポイントなど基礎知識を解説

しかし、人事評価制度を、給与や昇進の判断材料とする「人事考課」として扱うかどうかは会社によって異なるため、自社ではどのように定めるかを検討する必要があります。

人事評価制度と人事考課の組合せパターン

  • 人事評価制度は人事考課に直接的に影響させ、全面的に待遇に反映する
  • 人事評価制度は人事考課に間接的に影響させ、部分的に待遇に反映する
  • 人事評価制度は目標管理のための制度であり、人事考課に影響させない

参照:民間における人事評価制度の目的・役割の変遷 - 目標による管理制度における人事考課との結び付き(PDF p.3)|内閣官房

4)人事評価制度の評価項目・評価基準を決める

人事評価制度の導入目的にあわせて、評価項目と評価基準を決めましょう。

人事評価制度では、「能力」や「業績」など一人の社員が持つ複数の属性を切り分けた評価項目を設定することが一般的です。

人事評価制度における主な評価項目

評価項目

概要

業績

「業績評価」として、社員の業務上の成果を評価する。

役割

「役割評価」として、社員に任せる業務上の役割(ミッション)への貢献度を評価する。

職務

「職務評価」として、社員が担当する職務(ジョブ)の内容や難易度に応じた評価する。

能力

「能力評価」として、社員が業務で発揮する能力やスキルを評価する。

行動

「行動評価(バリュー評価)」として、社員が成果を出すために行った具体的な行動を評価する。

行動特性

「コンピテンシー評価」として、成果を出す社員に共通して見られる価値観などの行動特性を評価する。

多面性

「360度評価(多面評価)」として、上司や部下、同僚など複数の社員の視点を含めて評価する。

年功

「年功評価」として、社員の長年にわたる功労や功績を評価する

人事評価制度における評価基準は、様々な段階(レベル)設定がありますが、主に2つにわかれます。

  • 4段階評価や6段階評価のような「偶数」の段階設定
  • 5段階評価や7段階評価のような標準としての中間の評価値を許す「奇数」の段階設定

段階の数が多いほど、細やかな評価が可能ですが、多すぎると人事評価業務を行う社員を迷わせるため、標準値をどこに置くかを定めて、トラブルなく運用できる細かさを選びましょう。

また、絶対評価と相対評価、どちらで人事評価を行うかも検討する必要があります。

人事評価制度における「絶対評価」と「相対評価」の比較表

絶対評価

比較項目

相対評価

期初の面談時に直属上司と社員との間で合意した目標の達成度をはかる

概要

直属の上司が評価対象の社員が所属するグループの中で比較し、順位をつける

  • 社員の同意を前提にしているため、目標を達成できれば不満を持ちにくい
  • 目標が業績と関係しない設計の場合、昇給と結びつけづらく、報酬制度との整合性がとりづらい

メリットとデメリット

  • 順位付けは報酬制度との相性が良い
  • グループ決めの関係で不当に評価が高い者が発生しやすく、不公平感が生まれやすい

なお、評価の対象とする「期間」の設定も重要です。

期初に目標設定、期末に成果に関する面談を行う必要があるため、3カ月あるいは6カ月のように評価期間を区切るのが一般的と言えます。

その他、通常の社員に対して行う「定期評価」だけでなく、試用期間中の社員が正社員になるケースなど、通常とは異なる「特別評価」をどのように定めるかも留意する必要があるでしょう。

それぞれ評価項目ごとに評価基準を定め、制度の詳細を決めましょう。

なお、具体的な人事評価制度としてのアウトプット例は、次の公務員向けの制度の情報発信や説明資料が参考になります。
参照:人事評価|内閣官房
参照:人事評価マニュアル《資料編》(PDF*)|内閣官房
*令和4年9月に利用終了、古いバージョンの人事評価制度だが、必要な資料がひとつのPDF資料にまとまっており、参考にしやすい

5)人事評価の結果についての待遇への反映方法を規定する

人事評価制度のそれぞれの評価項目について、どのように待遇に反映するかを規定します。

一般的に、人事評価の結果を「等級制度」によって社員の序列をつけ、その社員の序列にあわせた「報酬制度」が機能するような制度設計を行います。一方、あえて等級制度を排除し、人事評価制度と報酬制度のみで構成される「ノーレイティング」を採用する会社もあります。

ノーレイティングでは、社員の序列を定めないため、社員への報酬の裁量権は上司に一任されます。裁量権のある上司と部下が対話する場を多く設定することにより、制度の公平感を保つ仕組みです。

6)人事評価を行う幹部社員を教育する

人事評価制度は、「めんどうくさい」や「意味ない」といったネガティブな言葉とセットで検索候補にあがるほど、社員に歓迎されない側面があります。

理由は、人間が評価を行う関係で、人事評価エラーと呼ばれる偏った評価をされる可能性があり、公平さに欠ける仕組みであると思われているからです。

人事評価制度の問題点について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
人事評価制度のメリットとデメリットから見る問題点と見直しポイント

人事評価制度が信頼される土台となる「公平感」を出すには、幹部社員に対する研修を実施し、評価を行う者としての教育を徹底することです。

人事評価が人事考課に直結するケースでは「考課者研修」とも呼ばれます。

幹部社員の行う人事評価が会社や一般社員にどのような影響を与えるか、幹部社員が評価を行う際に陥りがちな心理的傾向など人事評価制度を公平に行うための心構えを中心に教育します。

あわせて詳細なやり方などをまとめた人事評価のマニュアルも整備しましょう。

7)一般社員に周知し、運用を開始する

幹部社員への教育が完了したら、人事評価制度で評価される側の一般社員に対しても、人事評価制度の必要性と制度概要を周知しましょう。

社員が「会社が自身をどのように評価するか」の基準を知り、経営方針に従った行動目標を掲げられるようにします。

8)導入した制度の振返りを定期的に行う

人事評価制度は導入して運用をスタートしたら、それで終わりというものではありません。定期的に、導入した制度の振返りを行いましょう。

人事評価制度の振返りに適切なタイミングは、従業員満足度調査後の人事制度全体の振返りを行う時です。従業員満足度調査の中に、導入した制度の満足度を問うアンケート項目を追加するのも有効です。

人事評価制度の導入目的を達成しているか、人事評価エラーが起こるような不備がないか、など多角的にチェックし、改善点を盛り込んだ新制度にアップデートしましょう。

なお、従業員満足度調査のアンケートについて知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
従業員満足度アンケートはどう作る?項目例を解説

2.人事評価制度を作る際に配慮したい社会情勢やトレンド

人事評価制度を作る際には、次のような社会情勢やトレンドにも配慮しましょう。

  • 国の掲げる「同一労働同一賃金・均等待遇」
  • 能力主義・成果主義
  • 副業や社内副業など「業務外」の事業活動

国の掲げる「同一労働同一賃金・均等待遇」

等級制度と報酬制度をあわせた人事評価制度を作る場合、社員の種類による待遇差を作らないように配慮が必要です。

「同一労働同一賃金」で言われる「賃金」は、給与以外の待遇も含まれており、通常の社員とそれ以外の社員とで、人事評価制度の仕組みに根ざした待遇差がある場合、不合理なものとして是正対象となります。

例えば、同じ仕事を行うテレワーク勤務の社員と、オフィス出勤の社員について、勤務形態を理由に評価を変え、結果的に賃金などの待遇差につながる場合、不合理な待遇差として扱われる可能性があります。
参照:同一労働同一賃金特集ページ|厚生労働省

なお、社員の種類と福利厚生の待遇差について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
社員の種類で福利厚生が違うとどうなる?待遇差の見直し方法を解説

能力主義・成果主義

かつては社員の「これまでの実績」を評価する年功評価が主流でしたが、人事評価の期間内に出せる能力や成果を重視する「能力主義・成果主義」が重視される傾向があります。

人事評価制度を作る際、制度そのものには「年功評価」を盛り込んでいなくとも、評価する幹部社員に年功を評価する心理的傾向がある場合、「ベテラン社員は評価が高く、新人社員は評価が低い」といった、会社として意図しない偏向評価が行われ、制度の公平感が損なわれる可能性があります。

人事評価業務を担う幹部社員に対して、偏向評価を未然に防ぐ教育・研修を行いましょう。

副業や社内副業など「業務外」の事業活動

会社以外の仕事を請け負う「副業」や、他部署の仕事を請け負う「社内副業」など、直接的に業務に結びつくわけではない業務外の事業活動は、社員の過重労働を防ぐ労務管理の一環として、直属の上司は把握する必要があります。

社員の業務外の事業活動を把握するのであれば、社員のモチベーションにつながるよう、人事評価にも組み込めるような制度設計を考えるとよいでしょう。

副業における労務管理について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
副業や兼業を認めると労務管理はどうなる?ガイドラインをもとに解説

(執筆 株式会社SoLabo)

生24-1410,法人開拓戦略室

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