「従業員満足度と顧客満足度には正の相関関係がある」という定説は、どのような理論をもとにしているか、ご存知でしょうか。
本記事では、従業員満足度と顧客満足度に関する理論とともに、従業員満足度と顧客満足度を同時に高めるポイントについてご紹介します。
1.従業員満足度と顧客満足度の相関関係を示す理論
「従業員満足度と顧客満足度には相関関係がある」という定説は、主に次の2つの理論が元になっています。
【従業員満足度と顧客満足度の相関関係を示す理論】
要点 |
従業員満足度があがれば顧客満足度と業績があがる |
従業員満足度と顧客満足度が事業展開のヒントとなる |
理論名 |
サービス・プロフィット・チェーン(Heskett et al. 1994) |
バリュー・プロフィット・チェーン(Heskett et al. 2003) |
概要 |
従業員満足度・顧客満足度・業績の相関関係があることを示した概念。会社が社員を大切にすると、会社への帰属意識を生み、商品・サービス品質が向上し、連鎖的に顧客満足度が向上し、収益の向上と事業成長につながるという考え方。 |
企業にとって一人の顧客が将来もたらす価値の総計(顧客生涯価値*)を予測し、顧客満足度や従業員満足度で評価した指標ごとのデータを分析し、ひとつの要素と利益の相関関係を見定め、適切な事業展開を導く考え方。 |
つまり、従業員満足度があがると、離職率がさがり、優秀な人材が定着して生産性が安定的に向上します。事業体制の安定的な拡充は、顧客へのサービスの質を向上させるため、顧客満足度につながり、顧客満足度があがると売上があがり、業績もあがります。
生まれた利益は従業員への還元でき、福利厚生を充実させ、従業員満足度があがる一因になります。そして、理論に則った事業予測を行う場合には、従業員満足度と顧客満足度が事業に影響を与えるひとつの要素として重要となります。
従業員満足度とは?
従業員満足度とは、社員の会社に対する評価をはかる定期調査の結果であり、評価指標ごとに数値で段階的に示される満足や不満の度合いを指します。
英語で「Employee Satisfaction」と呼ばれ、「ES」(読み方:イーエス)と略語で表現されることもあります。
従業員満足度調査をアウトソーシングして、外部委託業者の定める共通の評価指標を用いることもできますが、会社ごとに労働条件や福利厚生が異なるため、会社それぞれ個別の事情にあわせた評価指標を設定し、従業員満足度調査することが一般的です。
従業員満足度の評価意表について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
従業員満足度の指標ごとに対策してエンゲージメントを高めよう
顧客満足度とは?
顧客満足度とは、顧客が商品購入やサービス利用の際、その商品やサービスに対して覚える満足や不満の度合いのことを指します。
英語で「Customer Satisfaction」と呼ばれ、略して「CS」(読み方:シーエス)と呼ばれることもあります。
一般的な顧客満足度調査では、顧客に対してアンケート記入をお願いし、結果のデータを分析します。
顧客満足度の評価指標は、調査目的によってそれぞれ異なるものが設定されます。
- 会社ごとの独自の顧客満足度調査
- 第三者機関による業界ごとの顧客満足度調査
- 第三者機関による業界横断で算出する顧客満足度調査
2.従業員満足度と顧客満足度を同時に高めるには?
従業員満足度と顧客満足度を同時に高めるポイントは次のとおりです。
1)ビジョンを明確なメッセージとして発信する
2)社内外に発信する情報の透明性を高める
3)社員や顧客とのタッチポイントを大切にする
4)福利厚生を充実させる
1)ビジョンを明確なメッセージとして発信する
「会社が何を目指しているのか」というビジョンを理解することで、社員は商品やサービスに関わることそのものに満足を覚えるようになり、従業員満足度が向上します。
会社のビジョンに賛同した社員にとって、仕事は単なる稼ぐ手段ではなく、自己実現や社会貢献の一種となり、やりがいになります。
会社のビジョンに対する個々の社員の貢献具合がはかれるよう、人事評価制度の中で、社員個人へのビジョン実現の取組み内容を宣言させ、人事評価面談時に成果として振返る仕組みも有効です。
顧客も同様で、会社が示すビジョンに賛同した顧客には、数多ある商品やサービスの中から選んでもらえるようになります。
会社の商品やサービスに関わることそのものに満足を覚える顧客が増えれば、結果、顧客満足度が向上します。
2)社内外に発信する情報の透明性を高める
会社がホームページだけでなくSNSアカウントを運営して情報発信するのが一般的な現在、社内外のコミュニケーションに積極的である会社の姿勢は、社員や顧客に安心感を与えます。
会社はオープンスタンスでSNS運営することで、現在の顧客である一般消費者、あるいは将来的に社員や顧客になるかもしれない方からフィードバックとして意見や要望を得て、会社の認知度の向上や事業改善につなげていくことができます。
つまり、会社が発信する情報の透明性を高めることで、従業員満足度と顧客満足度の向上が見込めると言えるでしょう。
なお、会社に求められる「情報の透明性」とは、「会社としてどのような事業活動が行ったか」を積極的に情報公開するオープンスタンスと、その活動への説明責任を担うことです。
商品・サービスのPRや事業拡大などのポジティブな情報発信だけでなく、事業縮小や不祥事への事実説明と謝罪などネガティブな情報発信も誠実に行うことが求められます。
3)社員や顧客とのタッチポイントを大切にする
社員と会社、顧客と会社といった接点(タッチポイント)を大切にし、得られた意見や要望による事業改善を積極的にしていきましょう。
社員の不満や顧客からのクレームは、前提に会社への期待あってのものであるため、不満やクレームへの対応次第で社員や顧客の満足度を向上させるチャンスになり得ます。
ただし、中には、不当な要求や過剰なクレームをぶつけるカスタマーハラスメントも見られるため、対象の見極めが重要です。
4)福利厚生を充実させる
会社の福利厚生を充実させて、社員ニーズの高い制度を揃えることにより、従業員満足度だけでなく顧客満足度を向上させましょう。
「会社の福利厚生の充実」は、直接的には社員にしか利益がないため、従業員満足度を向上させる施策でしかない印象があるかもしれませんが、顧客が「従業員満足度と業績の相関関係」を知っている場合、顧客満足度にもプラスに働きます。
つまり、福利厚生がいい会社は、従業員満足度や顧客満足度が向上しやすいと言えるでしょう。
福利厚生がいい会社の制度について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生が良い会社とは?特徴や制度を解説
また、従業員の成長を支援する制度や、社員を対象とした慰労会はもちろん、社員と優良顧客に限定したセールやキャンペーンなどを行い、会社からの感謝の気持ちを伝える施策も有効です。
この他に、従業員満足度を向上させる取組みについて知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
従業員満足度を向上させる取り組みは?効果についても解説
(執筆 株式会社SoLabo)
生24-1408,法人開拓戦略室