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福利厚生でランチをサポートするなら?食事支給と費用補助を解説

経営課題事例

2022-08-24

「福利厚生のランチ」をテーマに、食事の福利厚生を導入するときに福利厚生費として経費で処理するにはどうすべきか、注意点やサービス・制度の例について、経営者向けに解説します。

目次

福利厚生として、従業員へランチのサポートを行う企業は少なくありません。

従業員同士のコミュニケーションの活性化だけでなく、従業員が長く健康で働けるようサポートする狙いもあります。

医薬品も食べ物も元を辿れば根源は同じで、どちらも健康には欠かせないという「医食同源」の考え方もあるとおり、職場での食事の質は従業員の健康を左右するからです。

ただし、福利厚生で食事を扱う場合、金銭の流れによって経費で処理できるケースと処理できないケースがあります。

福利厚生で従業員の食事をサポートする施策や制度を、できるだけ経費になるように導入したい経営者は、ぜひ最後までご覧ください。

1.福利厚生のランチのサポートには食事支給と費用補助がある

企業が福利厚生として食事面のサポートするとき、食事の現物支給と、食事代の費用補助の2つに分かれます。

食事支給は要件を満たせば一部費用を経費で処理できる

食事支給とは、社食(社員食堂)のように、企業から従業員へ食事の現物を支給することを指します。

朝食・昼食・夕食・夜食など摂る食事の種類は関係なく、次の要件を満たせば食事支給として認められ、経費で処理できます。

(1)役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること。

(2)次の金額が1か月当たり3,500円(消費税および地方消費税の額を除きます。)以下であること。

(食事の価額)-(役員や使用人が負担している金額)

引用:No.2594 食事を支給したとき|国税庁

なお、「食事の価額の負担」について厳密には、企業の金銭の支払いは食事を提供する者に対して直接、行う必要があります。

例えば、従業員が社外のレストランに食事代を支払い、その一部を後で企業が負担する場合は「食事の支給」には当たらず、食事代の費用補助として扱われ、経費にできません。

参照:使用者が使用人等に対し食事代として金銭を支給した場合|国税庁

ただし、社外レストランと提携して実質的な「社員食堂」として扱い、従業員が食事代を支払う際に企業が一部の費用負担をする仕組みを整えれば「食事の支給」として扱えます(具体例としては記事後半で解説する「外食のランチをサポートする福利厚生の導入例」が該当)。

なお、福利厚生は原則として「均等待遇」と「社会通念上、相当」であることが求められるだけでなく、ケースによっては企業が提供すべき「合理性」が問われることがあるので、注意が必要です。

例えば、福利厚生として一般的な「ランチ」は、オフィスでフルタイム勤務する場合、就業の合間の休憩時間に摂り、「勤務中の食事」に当ります。

ただし、朝食や夕食は「勤務中の食事」ではないため、食事支給をしても「社会通念上、相当」と判定されるかはケースバイケースで、福利厚生として企業が食事支給すべき「合理性」が個々に問われるものと推定されます。

均等待遇など、福利厚生の基本については次のコンテンツで詳しく解説しています。

福利厚生とは?定義やメリットを経営者向けにわかりやすく解説

食事代の費用補助は原則、経費で処理できない

食事代の費用補助とは、従業員が支払った食事代の一部を企業が負担することを指します。

食事代の費用補助は原則、経費で処理できません。

ただし、深夜勤務者に夜食については1食当たり300円(消費税および地方消費税の額を除く)以下の金額を経費として扱えます。

参照:No.2594 食事を支給したとき|国税庁

なお、社外の人間が参加するランチミーティングの費用は福利厚生費として計上できませんが、参加するメンバーが慣例化していない限り、交際費として計上できる可能性があります。

参照:交際費等(飲食費)に関するQ&A(専ら従業員等のための飲食費①)|国税庁

2.食事を支給する福利厚生のサービス導入例と注意点

福利厚生のランチをサポートする福利厚生の導入例を解説します。

どの例も、前提条件として、食事の価額の半分以上を従業員が負担、かつ1カ月当りの企業負担が従業員一人当り税別3,500円以下の「食事支給」要件を満たす必要があることは共通です。

職場でのランチをサポートする福利厚生の導入例

目的

福利厚生として、オフィス勤務者の職場でのランチをサポートする。

仕組み

社食のオフィスデリバリー型サービスを活用する。お弁当として社食を仕入れて食事代の一部(月20営業日なら例えば一回175円)を支払い、従業員には半額以上(例えば500円)を負担してもらう。

注意点

  • 「費用補助」が適用されないよう、仕組みをよく検討する必要がある。
  • 経費で処理したいなら、企業負担が月間で税別3,500円を超えないよう、企業が負担する一回の金額をよく検討する必要がある。

職場でのランチを補助的にサポートする福利厚生の導入例

目的

福利厚生として、オフィス勤務者の職場で摂るランチだけでは、不足しがちな栄養素を副菜などで摂取させ、健康増進を目指す。

仕組み

オフィスコンビニ・設置型サービスを活用する。野菜やフルーツ、惣菜などの副菜を仕入れ段階で食事代の一部(例えば100円)を支払い、従業員には半額(例えば100円)を負担してもらう。

注意点

  • 経費で処理したいなら、例えば1個100円なら35回まで利用可になるよう、月ごとに個々人へ譲渡不可のランチサポートのチケットを配付するなど、一人当りの利用制限を設ける必要がある。

外食のランチをサポートする福利厚生の導入例

目的

福利厚生として、オフィス勤務者の外食ランチをサポートする。

仕組み

指定レストランの選択制サービスを活用する。指定のレストランを従業員が利用する際に企業の費用負担分(例えば税別1000円のランチなら500円)を決済する仕組みにし、従業員には半額(例えば500円)を負担してもらう。

注意点

  • 「費用補助」が適用されないよう、仕組みをよく検討する必要がある。
  • 経費で処理したいなら、例えば1回500円のランチサポートであれば月ごとに7回までなど、一人当りの利用制限を設ける必要がある。

社食を用意してランチをサポートする福利厚生の導入例

目的

福利厚生として、オフィス勤務者に社員食堂(社食)やカフェテリアを用意し、健康的なランチを提供する。

仕組み

社員食堂やカフェテリアの運営委託サービスを活用する。委託先に食事代の一部(例えば月20営業日なら一食175円)を支払い、従業員には半額以上(例えば500円)を負担してもらう。

注意点

  • 導入時の初期費用やサービス利用費だけでなく、場所代、運営費などが別途かかる可能性がある。
  • 経費で処理したいなら、企業負担が月間で税別3,500円を超えないよう、企業が負担する一回の金額をよく検討する必要がある。

宅配で在宅ランチをサポートする福利厚生の導入例

目的

福利厚生として、在宅勤務者に宅配サービスでランチを提供する。

仕組み

在宅勤務者向けの宅配型サービスを活用する。指定の宅配型サービスを従業員が利用する際、企業の費用負担分(例えば月20営業日なら一食175円)も同時に決済する仕組みにし、従業員には半額以上(例えば500円)を負担してもらう。

注意点

  • 「費用補助」が適用されないよう、仕組みをよく検討する必要がある。
  • 経費で処理したいなら、企業負担が月間で税別3,500円を超えないよう、既存のオフィスでのランチサポートがある場合、在宅のランチサポートを併用した場合のケースも想定し、企業が負担する一回の金額をよく検討する必要がある。

ランチをサポートする福利厚生を導入する際に注意すべき点を3つ解説します。

福利厚生費に計上できるサービスプランの導入を検討する

食事の提供者に企業が費用を直接支払う仕組みを整えられれば、職場でのランチに限らず、外食や宅配でも福利厚生費に計上できる可能性があるため、できるだけ経費に処理できるように福利厚生サービスプランの導入を検討します。

なお、福利厚生のサービスを利用する場合、導入時の初期費用やサービス利用費が別途かかる可能性があります。

上でも説明したとおり、福利厚生は「均等待遇」の考え方が根底にあるため、基本的にどの福利厚生サービスも「従業員全員の加入」が前提となります。

結果、社員一人当たりの利用費が積み重なり、大きな負担になる可能性がある点にも、注意が必要です。

社員の健康を考えて食にこだわったサービスを選ぶ

福利厚生の食事はあくまで「従業員の健康の増進」が目的です。

利用する福利厚生のサービスを比較する際は、値段の安さで選ぶのではなく、低糖質や野菜不足の解消など、食のこだわりのあるサービスで選ぶ方が福利厚生のランチとしてふさわしいと言えます。

また、健康増進の観点で言えば、ランチにこだわるのではなく、就業中でも手軽に摂りやすい健康志向の軽食を従業員価格で提供するのも有効です。

なお、企業の社会的責任(CSR)の観点も大切に、消費期限の短い食品を置く場合、廃棄が出ないよう、需給ギャップが起こりにくい仕組みのサービスを採用します。

勤務形態が異なる社員も恩恵を受けられるように検討する

リモートワークの普及で在宅勤務をする人も珍しくない中、オフィス勤務者だけランチのサポートがある状況が続くことは不公平感を生むため、宅配サービスなどで在宅勤務者のランチサポートを検討する必要があります。

ただし、福利厚生の「食事支給」と認められるには1カ月当りの企業負担が、従業員一人当り税別3,500円以下である必要があり、そこからランチサポートの一回あたりの金額や回数の制約や条件を設けている傾向があります。

オフィス勤務時と在宅勤務時でそれぞれ仕組みが独立しているランチサポートを両方、利用してしまうと、従業員金額を経費で落とせなくなる可能性があります。

一人の従業員が在宅勤務時とオフィス勤務時のランチサポートを両方利用しても、経費上の処理が難しくならないよう、ランチサポート全体の仕組みと制約の見直しが必要になります。

3.食事代を費用補助する福利厚生の制度例

食事代を費用補助する形では福利厚生費で処理できませんが、別の予算を立て、従業員の食事代の費用補助が行われることがあります。

福利厚生の費用補助の制度例を解説します。

社員が立替したランチ代を企業が費用補助

社員が立替したランチ代を企業が費用補助する場合、「社員同士のコミュニケーション活性化」などの目的で予算を別立てし、食事代の費用補助を行います。

そもそもランチ代の立替での費用補助は福利厚生費として計上できないため、必須の要件はありませんが、主な流れは次のとおりです。

  • 社員に事前にランチするメンバーを申請してもらいます。
  • 費用補助の予算がまだあるか、など費用補助の制度のルール上、問題ないことを確認します。
  • ランチの後、社員にランチに参加したメンバーが写る証拠写真やレシートを提出してもらい、制度の規定に従い、費用補助を行います。
  • メンバー間だけではなく、その他の社内メンバーのコミュニケーション促進につながるよう、担当者が提出された写真を社内SNSに掲載します。

なお、社外の取引先などの関係者を含めたランチミーティングの場合、交際費として計上できるため、費用補助の制度を適用しないよう、社員に周知が必要です。

福利厚生のカフェテリアプランのポイント使用

福利厚生の代行サービスを利用する場合、カフェテリアプランと呼ばれる、社員の個々人にポイントを付与し、福利厚生の多種多様なメニューから自由に選択させるサービスプランがあります。

選べるものの中に、食事代の費用補助としてレストランの割引などもありますが、従業員の個人的なポイント使用であるため、基本的に企業側がアクションすることはありません。

カフェテリアプランのメニューは、利用するサービス内容によって非課税で経費にできるものとできないものがあります。

参照:カフェテリアプランによるポイントの付与を受けた場合|国税庁

カフェテリアプランの利用であっても、福利厚生費の原則は変わらず、食事代の費用補助は認められず、経費にはできません。

また、福利厚生の代行(アウトソーシング)については次のコンテンツで詳しく解説しています。

福利厚生のアウトソーシングとは?市場規模と種類とメリットを解説

(執筆 株式会社SoLabo)
(監修 株式会社SoLabo 田原 広一)

生22-3840,法人開拓戦略室

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