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福利厚生の旅行費用が経費と認められる要件と費用補助の考え方を解説

経営課題事例

2022-08-24

「福利厚生の旅行」をテーマに、社員旅行や研修旅行、従業員の家族旅行の費用を経費にする要件や費用補助のための考え方について、経営者向けに解説します。

目次

福利厚生として、社員旅行や研修旅行を企画し、従業員に家族旅行を奨励する企業は少なくありません。

旅行の内容が福利厚生として相応と認められれば、旅行の費用を福利厚生費として処理できます。

福利厚生の経費にする要件や費用補助の考え方を知り、企業の負担を最小限にした福利厚生の旅行を企画し、社員のモチベーションを高めましょう。

1.福利厚生の社員旅行費を経費にできる?

社員旅行は、一般に、企業が従業員の慰労を目的として企画して参加を募る団体旅行を指します。

福利厚生の社員旅行費は、要件を満たせば福利厚生費として一部を経費にできます。

社員旅行を経費で処理できる要件

社員旅行を経費で処理できる要件について、国税庁の指針(参照:No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行|国税庁)を参考にまとめると、次のとおりです。

  • 旅行の期間が4泊5日以内
  • 旅行に参加した人数が全体の人数の50パーセント以上
  • 企業の負担が社会通念上、相当で少額

福利厚生として扱われるためには、原則として「均等待遇」と「社会通念上、相当」であることが求められるため、上の要件1~3は、社員旅行のケースに順当に落とし込んだものといえます。

なお、「全体の人数」とは、企業全体の人数ではなく、工場や支店などの職場ごとの単位で社員旅行を行う場合、それぞれの職場全体の人数の50パーセント以上が参加していれば認められます。

また、企業の負担が社会通念上、相当で少額とされる例は、次のとおりです。

  • 旅行費用が一人当たり総額15万円:企業の負担7万円、参加者の負担8万円
  • 旅行費用が一人当たり総額25万円:企業の負担10万円、参加者の負担15万円

なお、福利厚生の基本については次のコンテンツで詳しく解説しています。

福利厚生とは?定義やメリットを経営者向けにわかりやすく解説

社員旅行を経費で処理できなくなる要件

社員旅行と認められる要件を満たしても、経費で処理できなくなる追加の条件があります。

次の条件が加わると、社員旅行とみなされず、福利厚生費として認められません。給与や交際費などで処理する必要があります。

  • 1 役員だけで行う旅行
  • 2 取引先に対する接待、供応、慰安等のための旅行
  • 3 実質的に私的旅行と認められる旅行
  • 4 金銭との選択が可能な旅行

引用:No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行|国税庁

福利厚生は、企業が給与以外に従業員へ与える恩恵であるため、一部の役員だけが享受するケースは福利厚生に当りません。

同様に、代表取締役の社長や執行役員だけで構成される小規模な企業が社員旅行を行なっても、その旅行費用は福利厚生費として処理できません。

他にも、役員だけでなく、参加人数を絞る目的で参加者の前提条件を付与すると、社員旅行とはみなされないため、注意が必要です。

参照:成績優秀者を対象として行う海外旅行に係る経済的利益|国税庁

なお、多くの従業員が参加する中に、代表取締役や執行役員などの役員が含まれるのは、福利厚生の旅行として問題はありません。

また、取引先を参加者に含む旅行も、福利厚生を受けるべき従業員ではないため、福利厚生の旅行とは認められません。得意先や仕入先、その他事業に関係のある者に対して慰労を行う費用は交際費に当ります。

参照:No.5261 交際費等と福利厚生費との区分|国税庁

「私的旅行」とみなされるのは、福利厚生の旅行として従業員の慰労の目的を果たしていないケース、例えば旅行先で従業員に、役員が連れてきた幼児の子守りを任せる場合などが該当します。

「金銭との選択が可能な旅行」とは、社員旅行に参加しない社員に対し、現金や商品券などを渡して補填するケースが該当します。

2.福利厚生の研修旅行費を経費にできる?

研修旅行が「会社の業務を行うために直接必要なもの」とみなされる場合、研修旅行の費用は全て経費にできます。

参照:No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行|国税庁

研修旅行を経費で処理できる要件

研修旅行を経費で処理できるようにするポイントは「会社の業務を行うために直接必要な部分」を見極めることです。

「直接必要な部分」は経費にできますが、「直接必要でない部分」については経費にできません。

例えば、研修旅行の中に観光など従業員の慰労目的の日程が含まれる場合、慰労の部分は「会社の業務を行うために直接必要な部分」ではないため、研修旅行として認められず、経費にできません。

研修旅行なら全額を福利厚生費として経費にできますが、研修旅行以外の要素が含まれると全額を経費で処理できません。研修旅行に当る部分の経費にできる部分と、それ以外の部分とで場合分けした経費処理が必要になります。

なお、研修旅行と保養を兼ねるワーケーションも、研修内容に「会社の業務を行うために直接必要なもの」という企業側が負担する合理性が確認できれば、往復の交通費は経費にできる、という国の見解が出ています。

参照:労災や税務処理に関するQ&A - 「新たな旅のスタイル」 ワーケーション&ブレジャー - 税務処理の考え方について|観光庁 国土交通省

研修旅行を経費で処理できなくなる要件

研修旅行と認められる要件を満たしても、経費で処理できなくなる追加の条件があります。

研修旅行の費用の中に、会社の業務を行うために「直接必要でない」ものが含まれている場合、研修旅行の費用は参加する人の給与として課税され、経費で処理できません。

また、次の旅行は、原則、「会社の業務を行うために直接必要なもの」とみなされず、研修旅行として認められません。

  • (1)同業者団体の主催する、主に観光旅行を目的とした団体旅行
  • (2)旅行のあっせん業者などが主催する団体旅行
  • (3)観光渡航の許可をもらい海外で行う研修旅行

引用:No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行|国税庁

3.福利厚生の従業員の家族旅行費を経費にできる?

福利厚生で費用補助された従業員の家族旅行は私的旅行とみなされ、基本的に、福利厚生費として経費にはできません。

福利厚生で費用補助し、従業員の家族旅行を奨励するケースは次の2とおりです。

  • 1)企業が従業員に対して旅行の費用補助を直接行うケース
  • 2)カフェテリアプランで旅行の費用補助するケース

1)企業が従業員に対して旅行の費用補助を直接行うケース

企業が福利厚生として、従業員の家族旅行や帰省などの交通費を一部費用負担する制度を実施している場合、給与手当として扱います。

例えば、リゾート地でリモートワークを行いつつ、観光を行う「ワーケーション」は、保養の目的が強いために「会社の業務を行うために直接必要なもの」とみなされず、経費にはできません。

従業員のワーケーションの費用を企業が補助した場合、給与手当になります。

なお、出張先で業務後に休暇を取得し、観光を行う「ブレジャー」は、出張で必要な往復の交通費や宿泊費などは「会社の業務を行うために直接必要なもの」とみなされ、出張関連の費用として計上できます。

参照:労災や税務処理に関するQ&A - 「新たな旅のスタイル」 ワーケーション&ブレジャー - 税務処理の考え方について|観光庁 国土交通省

2)カフェテリアプランで旅行の費用補助するケース

福利厚生を外部にアウトソーシングし、福利厚生の専門会社が提供するカフェテリアプランを従業員に提供している企業は少なくありません。

福利厚生のカフェテリアメニューのひとつとして旅行費用の補助が選択され、利用された場合、費用補助分を福利厚生費として処理することはできません。

参照:カフェテリアプランによる旅行費用等の補助を受けた場合|国税庁

なお、福利厚生のアウトソーシングについては次のコンテンツで詳しく解説しています。

福利厚生のアウトソーシングとは?市場規模と種類とメリットを解説

(執筆 株式会社SoLabo)
(監修 株式会社SoLabo 田原 広一)

生22-3841,法人開拓戦略室

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