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サステナビリティに関する意識と消費行動-意識はシニア層ほど高いが、Z世代の一部には行動に積極な層も

財務担当者向け情報

2022-05-31

ニッセイ基礎研究所 久我 尚子 生活研究部 上席研究員

目次

1 はじめに~近年、高まるサステナビリティに関する意識、その実態は?

コロナ禍の影響も相まって、社会や地球環境の持続可能性への関心が高まっている。SDGsやESGといった言葉を聞く機会も増え、日常生活でも環境問題を意識して買い物ではエコバッグを持参したり、プラスチックごみが出にくい製品を選ぶという消費者も増えているようだ。

本稿では、ニッセイ基礎研究所が今年3月末に実施した調査1を用いて、消費者のサステナビリティに関する意識や日頃の消費行動について、性年代による違いに注目しながら見ていきたい。

1 「第8回 新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」、調査時期は2022年3月23日~29日、調査対象は全国に住む20~74歳、インターネット調査、株式会社マクロミルのモニターを利用、有効回答2,584。

2 サステナビリティについてのキーワードの認知状況~SDGsが首位、年齢が高いほど認知度は高い

1|全体の状況~SDGsは7割、再生可能エネルギーは6割が聞いたことがあるが内容まで理解は半数以下

調査ではサステナビリティについての約30のキーワードをあげて、『聞いたことがある』ものと『内容まで知っている』ものについてたずねた。

まず、『聞いたことがある』ものについては、最も多いのは「SDGs」(68.3%)であり、次いで「再生可能エネルギー」(58.4%)、「カーボンニュートラル」(43.4%)、「コンプライアンス(法令遵守)」(42.7%)、「ダイバーシティ」(41.2%)、「地方創生」(40.2%)と4割以上で続く(図表1)。

なお、「聞いたことがあるものはない」も17.6%を占めて目立つ。

『内容まで知っている』ものについても、上位には同様のものが並び、最も多いのは「SDGs」(39.7%)であり、次いで「再生可能エネルギー」(31.6%)、「コンプライアンス(法令遵守)」(26.8%)、「LGBTQ」(25.6%)、「カーボンニュートラル」(20.6%)と2割以上で続く。

なお、「内容まで知っているものはない」(40.2%)は、『内容まで知っている』もので最多の「SDGs」を超えて約4割を占める。

つまり、現在、社会や地球環境の持続可能性への関心が高まる中で、首位の「SDGs」は実に約7割の消費者が聞くようになっている一方で、現在のところ、いずれのキーワードも内容まで十分に理解している消費者は半数に満たない。

なお、『聞いたことがある』もののうち『内容まで知っている』との回答が占める割合が最も高いのは「LGBTQ」(68.8%)であり、次いで「コンプライアンス(法令遵守)」(62.8%)、「SDGs」(58.1%)、「フェアトレード」(57.6%)、「児童労働・強制労働」(56.3%)、「再生可能エネルギー」(54.1%)、「ワーケーション」(50.4%)、「コーポレートガバナンス」(50.0%)と半数以上で続く。

2|性別の状況~男性は企業活動、女性は日常の消費生活に関連するキーワードの認知度が高い

『聞いたことがある』ものについて性別に見ても、全体と順位はおおむね変わらず、男女とも首位は「SDGs」、次いで「再生可能エネルギー」があがる(図表2)。

男女を比べると、男性では「コーポレートガバナンス」(男性24.0%、女性8.9%、男性が女性より+15.1%pt)や「デジタルトランスフォーメーション(DX)」(同25.0%、同11.1%、同+13.9%pt)、「サプライチェーン・マネジメント」(同23.2%、同11.4%、同+11.8%pt)、「ゼロエミッション、ゼロウェスト」(同19.2%、同7.8%、同+11.4%pt)が女性で10%pt以上上回る。

さらに、男性では「CSR」(同15.2%、同5.5%、同+9.7%pt)や「ESG」(同11.7 %、同4.7%、同+7.0%pt)、「カーボンニュートラル」(同46.9%、同40.0%、同+6.9%pt)、「スマートシティ」 (同33.9%、同28.0%、同+5.9%pt)、「生物多様性」(同26.8%、同21.3%、同+5.5%pt)で女性を5%pt以上上回る。

一方、女性では「フェアトレード」(男性26.2%、女性36.0%、女性が男性より+9.8%pt)や「エシカル消費」(同12.5%、同19.0%、同+6.5%pt)、「再生可能エネルギー」(同55.8%、同61.1%、同+5.3%pt)で男性を5%pt以上上回る。

つまり、男性では企業活動に関連するキーワード、女性では日常の消費生活に関連するキーワードの認知度が高い傾向がある。なお、当調査では男性の就業率は79.9%、女性は53.2%である。

なお、『内容まで知っている』ものについて性別に見ても同様の傾向がある(図表略)。

3|年代別の状況~Z世代を含む20歳代より人生経験が長く、幅広い知識のある高年齢ほど認知度は高い

『聞いたことがある』ものについて年代別に見ても、全体と順位はおおむね変わらず、全ての年代で首位は「SDGs」、次いで「再生可能エネルギー」があがる。

また、全体で上位10位までのキーワードを中心に年代による違いを見ると、「LGBTQ」や「フェアトレード」は40・50歳代を中心に、その他は高年齢ほど選択割合は高い傾向がある。差の大きな70~74歳と20歳代を比べると、70~74歳では「地方創生」(20歳代27.2%、70~74歳66.7%、70~74歳が20歳代より+39.5%pt)で約4割、「再生可能エネルギー」(同44.0%、同78.7%、同+34.7%pt)や「コンプライアンス(法令遵守)」(同24.9 %、同58.9%、同+34.0%pt)、「カーボンニュートラル」(同26.9%、同54.6%、同+27.7%pt)で3割程度、20歳代を上回る。

ただし、当調査で調査対象とした70~74歳はインターネット調査のモニターであるため、同年代と比べてITリテラシーが高く、世の中への興味関心も高い可能性があることを考慮する必要があるだろう。なお、総務省「令和2年通信利用動向調査」によると、70~74歳の過去1年間でインターネットを利用したことのある割合は66.2%である。

また、『内容まで知っている』ものについて年代別に見ても同様の傾向がある(図表略)。

ところで、よく世間では「Z世代はサステナブル意識や社会貢献意識が高い」と言われるようだが、当調査では、人生経験が長く、社会課題等について幅広い知識を蓄えていると見られる高年齢層ほどサステナビリティについてのキーワードをよく認識しているという結果を示している。

なお、内閣府「社会意識に関する意識調査」を見ても、「日頃、社会の一員として、何か社会のために役立ちたいと思っている」割合は50歳代(67.9%)を中心に高く、必ずしも若者(18~29歳56.4%)で高いわけではない(図表3)。

一方で、同じ設問についての20歳代の選択割合は、1980年前後は3割台、1990年代は4割台、2000年代以降に半数を超えて上昇しているため(図表略)、現在の50歳代が20歳代だった頃と比べれば、Z世代を含む今の20歳代の方が社会貢献意識は高いと言える。よって、「昔の若者と比べると、Z世代を含む今の若者はサステナブル意識が高い」という見方が適当だろう。

3 サステナビリティについての意識や行動~意識はシニアで高く、行動はZ世代の一部で積極的

1|全体の状況~半数以上が危機意識を持つがボランティア等の実施は約1割、ただしコロナ禍が契機にも

次に、サステナビリティについての意識や行動に関する項目をあげて、それぞれどう思うかをたずねたところ、そう思う(「そう思う」+「ややそう思う」)との回答が最も多いのは「地球環境や社会問題は他人事ではない」(60.8%)であり、次いで「サステナビリティについてすぐに取り組まないと手遅れになる」(46.4%)、「社会の一員として、何か社会のために役立ちたい」(46.0%)、「地球環境や社会問題に積極的に取り組む人は意識が高いと思う」(42.3%)と4割台で続く(図表4)。

一方、そう思わない・考えたことがない(「あまりそう思わない」+「そう思わない」+「考えたことがない」)との回答が最も多いのは「サステナビリティに関する情報を発信している」(69.2%)であり、次いで「サステナビリティを意識してボランティア活動をしている」(62.5%)、「サステナビリティに関する情報を収集している」(56.4%)、「サステナビリティについて家族や友人と話すことがある」(55.3%)と半数以上で続く。なお、これらではそう思うとの回答は1割前後である。

つまり、サステナビリティについての意識に関する項目ではそう思うとの回答が多い一方、行動に関する項目ではそう思うとの回答が少ない(そう思わないとの回答が多い)傾向がある。なお、行動に関する項目で、そう思うとの回答が最も多いのは「サステナビリティを意識して生活をしている」(27.7%)だが3割未満にとどまる。

以上より、半数以上の消費者は地球環境や社会問題に対して危機意識を持っているものの、サステナビリティを意識して生活をしている消費者は3割に満たず、情報の受発信やボランティア活動といった社会に広く影響を与えるような行動に取り組んでいる消費者は1割程度にとどまる。つまり、サステナビリティに対する高い意識は醸成されつつあるものの、現在のところ、意識の高さと行動には隔たりがあるようだ。

なお、調査では、そう思うとの回答を得た項目について、意識や行動を始めた時期もたずねている。その結果、全ての項目で『コロナ禍の前から』の選択割合が高く、特に「地球環境や社会問題は他人事ではない」(70.8%)や「社会の一員として、何か社会のために役立ちたい」(66.6%)、「サステナビリティについて今すぐに取り組まないと手遅れになる」(62.6%)、「地球環境や社会問題に積極的に取り組む人は意識が高いと思う」(60.9%)は6割を超えて高い(図表5)。

一方、『コロナ禍をきっかけに』の選択割合が最も高いのは「サステナビリティに関する情報を発信している」(32.1%)であり、次いで「サステナビリティに関する情報を収集している」(28.9%)、「サステナビリティを意識して、具体的なボランティア活動をしている」(26.7%)、「コロナ禍の行動制約がなければ、サステナビリティを意識した活動をしたい」(26.5%)、「サステナビリティについて家族や友人と話すことがある」(26.3%)と約3割で続く。

つまり、サステナビリティについて高い意識を持っていたり、行動をしている消費者の多くはコロナ禍の前から意識したり、行動をし始めているものの、情報の受発信やボランティアなどの具体的な行動はコロナ禍をきっかけに始めたケースも比較的多い。

2|性別の状況~女性の方が男性より意識は高いが、現在のところ、意識の高さと行動には隔たりも

性別に見ても、全体と傾向はおおむね変わらず、男女とも、そう思うとの回答が最も多いのは「地球環境や社会問題は他人事ではない」である(図表6)。

男女を比べると、「地球環境や社会問題は他人事ではない」といった意識に関する項目では、そう思うとの回答はいずれも女性が男性を上回り、特に「地球環境や社会問題は他人事ではない」(男性49.8%、女性71.7%、女性が男性より+21.9%pt)や「地球環境や社会問題に積極的に取り組む人は意識が高いと思う」(同34.0%、同50.6%、同+16.6%pt)、「サステナビリティについてすぐに取り組まないと手遅れになる」(同39.5%、同53.2%、同+13.7%pt)、「サステナビリティを話題にする人は意識が高いと思う」(同28.1%、同39.9%、同+11.8%pt)、「社会の一員として、何か社会のために役立ちたい」(同40.5%、同51.5%、同+11.0%pt)で1割以上の差がひらく。

一方、行動に関する項目では、女性では「サステナビリティを意識して生活をしている」(同24.0%、同31.4%、同+7.4%pt)や「サステナビリティについて家族や友人と話すことがある」(同14.5%、同18.1%、同+3.6%pt)などで男性を上回るが、いずれもそう思うとの回答は2~3割にとどまる。

男性では「サステナビリティに関する情報を発信している」(男性10.0%、女性6.9%、男性が女性より+3.1%pt)や「サステナビリティを意識してボランティア活動をしている」(同14.4%、同11.7%、同+2.7%pt)などで女性をやや上回るが、そう思うとの回答は1割程度にとどまる。

つまり、女性の方が男性よりサステナビリティについての意識が高く、具体的な行動を実施している傾向があるものの、全体と同様、現在のところ、意識の高さと行動には隔たりがあるようだ。

また、意識や行動を始めた時期については、全体と同様、男女とも全ての項目で『コロナ禍の前から』が多いが、行動に関する項目では『コロナ禍をきっかけに』が比較的多い(図表略)。

なお、男女を比べると、女性では「サステナビリティを意識して生活をしている」で『コロナ禍の前から』(男性52.3%、女性60.9%、女性が男性より+8.6%pt)が、「サステナビリティに関する情報を発信している」で『コロナ禍をきっかけに』(同29.7%、同35.6%、+5.9%pt)の選択割合が男性を上回る。

3|年代別の状況~シニアで意識高く、20歳代で行動に積極的(ただし約2割)でコロナ禍が契機にも

年代別に見ても、全体と傾向はおおむね変わらず、全ての年代で、そう思うとの回答が最も多いのは「地球環境や社会問題は他人事ではない」である。

年代による違いを見ると、「地球環境や社会問題は他人事ではない」といった意識に関する項目では、高年齢層の方がそう思うとの回答が多い傾向があるが、「地球環境や社会問題に積極的に取り組む企業や組織で働きたい」については若いほど多い。

一方、「サステナビリティについて家族や友人と話すことがある」といった行動に関する項目では、おおむね50歳代を底に20歳代やシニア層でそう思うとの回答が多い傾向がある。特に、20歳代では「サステナビリティを意識してボランティア活動をしている」(22.7%)や「サステナビリティに関する情報を発信している」(18.1%)の高さが目立ち、どちらも50歳代を1割以上上回る。

よって、前節で見たサステナビリティについてのキーワードの認知状況もあわせて考えると、シニア層の方がサステナビリティについての知識があり、高い意識を持つものの、Z世代を含む20歳代の方がボランティア活動や情報の発信などの具体的な行動に積極的に取り組んでいる傾向がある。ただし、20歳代でも具体的な行動に取り組んでいる割合は2割程度にとどまるため(細かく見ると、「サステナビリティを意識してボランティア活動をしている」についてそう思う割合は20~24歳21.7%、25~29歳23.0%)、世間で言われる「Z世代はサステナブル意識が高い」という印象は、世代全体というよりもZ世代の一部に存在する積極層の行動によるものと見られる。

また、意識や行動を始めた時期については、全ての年代で全体と同様、意識に関する項目を中心に、おおむね『コロナ禍の前から』が多いが、30歳代を中心に行動に関する項目で『コロナ禍をきっかけに』が比較的多い傾向がある(行動に関する項目のみ図表7)。

30歳代では「サステナビリティに関する情報を発信している」や「サステナビリティについて家族や友人と話すことがある」で『コロナ禍をきっかけに』の選択割合が『コロナ禍の前から』を上回る。また、20歳代では「サステナビリティに関する情報を発信している」で両者が同じ値を占める。ただし、いずれも「分からない・意識したことがない」の選択割合も3割程度を占めて比較的高いため、若い年代ではコロナ禍をきっかけにサステナビリティに関わる行動を始めた層が他年代より多い傾向があるものの、うっすらとした傾向という程度の認識が適当だろう。

4 サステナビリティを意識した日頃の消費行動~女性やシニアで積極的、20歳代の一部で寄付傾向も

1|全体の状況~約8割がエコバッグ持参の一方、価格よりサステナビリティを優先する消費者は1割未満

日頃の消費生活におけるサステナビリティを意識した行動について約30の項目を挙げて、その実施状況をたずねたところ、圧倒的に多いのは「買い物の時はエコバッグを持参するようにしている」(77.2%)であり、次いで「リサイクル可能なゴミを分別して出している」(57.1%)、「洗剤やシャンプーなどは詰め替え製品(や量り売りのもの)を買うようにしている」(52.4%)、「長く使える製品を買うようにしている」(42.8%)、「(無駄なモノを買わずに、)できるだけ必要なモノだけで生活するようにしている」(39.7%)、「外出の際はマイボトルを持参するようにしている」(30.8%)と3割以上で続く(図表8)。

一方、「価格が安くても、地球環境や社会に悪影響のある製品は買わない(ようにしている)」(8.0%)や「価格が安くても、製造時に人権に問題のある製品は買わない(ようにしている)」(6.9%)、あるいは「価格が多少高くても、環境や社会問題に配慮された製品を買う(ようにしている)」(6.8%)や「価格が多少高くても、環境や社会問題に取り組む企業の製品を買う(ようにしている)」(4.6%)など、製品の購入時に価格よりもサステナビリティを優先する行動は、いずれも1割に満たない。

よって、多くの消費者にエコバッグの持参が定着し、詰め替え製品の購入などプラスチックごみが出にくい消費生活が浸透しつつある一方で、現在のところ、価格よりもサステナビリティを優先して製品を選ぶ消費者は1割に満たず少数派である。この背景には、現在のところ、消費者のサステナブル意識を投影できるような製品やサービスの種類がまだ少ないことのほか、価格を優先して購入したとしても、できるだけ必要なモノだけを買う、モノを大切に長く使う、リサイクルするといった行動でも持続可能な社会づくりに貢献できるといった影響もあるだろう。

2|性別の状況~女性の方が男性よりサステナビリティを意識した消費生活、ただし価格より優先は1割未満

性別に見ても、全体と傾向はおおむね変わらず、男女とも首位は圧倒的に「買い物の時はエコバッグを持参するようにしている」である(図表9)。

男女を比べると、「電気自動車などのエコカーを選んだり、エコドライブを実践している」(男性12.7%、女性9.3%、男性が女性より+3.4%pt)を除けば、全体的に女性の方が男性より選択割合が高く差もひらいている。特に「洗剤やシャンプーなどは詰め替え製品を買うようにしている」(同39.7%、同65.0%、女性が男性より+25.3%pt)や「外出の際はマイボトルを持参するようにしている」(同20.0%、同41.4%、同+21.4%pt)、「買い物の時はエコバッグを持参するようにしている」(同66.8%、同87.5%、同+20.7%pt)では女性が男性を2割以上上回る(このほか差がひらくものも多いが表記省略、詳細は図表9(c)参照)。

一方で、全体と同様、女性でも価格よりもサステナビリティを優先した行動は1割に満たない。

つまり、女性の方が男性よりサステナビリティを意識した消費生活を送っているが、これは前節までに見たような女性では消費生活に関わるサステナビリティについてのキーワードの認知度が高いことや、サステナビリティについての意識が高い傾向と一致する。ただし、現在のところ、女性でも価格よりもサステナビリティを優先して製品を買う消費者は少数派である。

3|年代別の状況~高年齢層ほどサステナブルな消費生活だが、20歳代の一部で寄付や企業応援傾向も

年代別に見ても、全体と傾向はおおむね変わらず、全ての年代で首位は圧倒的に「買い物の時はエコバッグを持参するようにしている」である。

年代による違いを見ると、全体的に高年齢層ほど選択割合は高く、特に「リサイクル可能なゴミを分別して出している」や「洗剤やシャンプーなどは詰め替えできる製品や量り売りのものを買うようにしている」、「長く使える製品を買うようにしている」、「あまり無駄なモノを買わずに、できるだけ必要なモノだけで生活するようにしている」では、70~74歳は20歳代を4割程度上回る。

一方、価格よりもサステナビリティを優先する行動のうち、特に「売上の一部が地球環境や社会問題に寄付される製品を買うようにしている」や「価格が多少高くても、環境や社会問題に積極的に取り組む企業の製品を買うようにしている」といった、製品を買うことがサステナビリティな社会づくりに貢献できるような行動は、選択割合は1割に満たずに低いながらも、40歳代を底に20歳代とシニア層で高い傾向がある。

また、「新品を買うより、人に借りたりシェアリングサービスを利用するようにしている」は若いほど選択割合は高まるが、全ての年代で選択割合は5%に満たない。

5 現時点ではサステナビリティを意識した消費生活は導入期、消費者属性による特徴把握も重要

昨年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードでは、サステナビリティを巡る課題への取り組みが大幅に拡充され、特にプライム市場上場企業は自社のサステナビリティについての基本的な方針を策定し、取り組み内容を開示することが求められるようになった。企業経営や事業活動において、サステナビリティという観点が必須のものとなる中で、本稿では3月下旬にニッセイ基礎研究所が実施した調査に基づき、消費者側のサステナビリティに関する意識や行動について捉えた。

その結果、消費者の実に約8割がSDGsという言葉を聞いたことがあり、半数以上が地球環境や社会問題に対して危機意識を持っているなど、社会や地球環境の持続可能性に対する高い意識が醸成されつつある様子がうかがえた。

一方で、現在のところ、意識の高さと行動には隔たりがあり、発展過程、あるいは導入期にあるような状況も見てとれた。SDGsをはじめとしたサステナビリティについてのキーワードを内容まで十分に理解している消費者は半数に満たず、持続可能な社会づくりを意識したボランティア活動や情報の受発信などの具体的な行動に取り組む消費者は1割程度にとどまっていた。また、買い物時のエコバッグの持参や詰め替え製品の購入など、プラスチックごみが出にくい消費生活が浸透しつつある一方で、価格よりも環境や社会問題への影響を優先して製品を買う消費者は1割に満たずに少数派であった。

これらの背景には、前述の通り、現在のところ、消費者のサステナブル意識を投影できるような製品やサービスの種類がまだ少ないことが、まずあげられるだろう。

一方で企業側からすれば、サステナビリティを配慮した製品の製造には相応のコストがかかる。サプライチェーンの再構築や新素材による製品開発などのほか、足元の原材料やエネルギー価格の上昇、円安進行によるコスト増の負担もある。消費者のサステナブル意識を叶える製品やサービスの提供は容易なことではないだろうが、消費者の実に約6割が「地球環境や社会問題は他人事ではない」と考えている現状を見れば、消費者に非常に響きやすい状況にはある。

また、よく世間ではZ世代のサステナブル意識の高さが取り上げられるようだが、本稿で見た通り、意識の高さはZ世代というよりもシニア層ほど強く見られる特徴であり、Z世代では他年代と比べてサステナビリティを意識した行動に積極的な傾向はあるが、それは一部の積極層によるものであるなど、必ずしも印象通りではないようだ。つまり、サステナビリティが響きやすい消費者はZ世代に限らず、また、必ずしもZ世代だからと言ってサステナビリティが響きやすいわけではない。将来的にはサステナビリティという観点がすべての消費者にとって重要なものとなっていくのだろうが、導入期の現在では、消費者の属性による特徴をきめ細やかに捉えたターゲット設定も重要である。

以上

(執筆 久我 尚子 (くが なおこ) 生活研究部 上席研究員)

2022-917G

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