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福利厚生の見直しはどう行う?時期とやり方について解説

経営課題事例

2022-11-21

「福利厚生の見直し」をテーマに、福利厚生を見直す必要性や、見直しの時期と方法について経営者向けに解説します。

目次

新しい生活様式の浸透により、これまで問題なかった福利厚生であっても、見直しをせずに放置すると「待遇が時勢に合わない」として従業員満足度の低下につながる可能性があります。

福利厚生の見直しが必要な理由、見直すべき時期や具体的な見直し方法について、経営者向けに解説します。

1.福利厚生の見直しはなぜ必要か?

2020年に専門家会議の提言をもとに厚生労働省から公表された「新しい生活様式」には「働き方の新しいスタイル」として、企業の福利厚生に影響を与える次の要素が挙げられています。

  • テレワークやローテーション勤務
  • 時差通勤でゆったりと
  • オフィスはひろびろと
  • 会議はオンライン
  • 対面での打合せは換気とマスク

※業種ごとの感染拡大予防ガイドラインは、関係団体が別途作成

引用:新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」の実践例を公表しました―<新しい生活様式の実践例>(4)働き方の新しいスタイル|厚生労働省

「働き方の新しいスタイル」の要素を、福利厚生制度に対応させると、次の表になります。

「働き方の新しいスタイル」の要素と福利厚生制度の対応表

要素名

対応する福利厚生の制度・施策の例

テレワーク

  • 自宅で勤務する「在宅勤務制度」
  • 勤務場所以外で勤務する「テレワーク制度」や「リモートワーク制度」

ローテーション勤務

  • 時間ごとに交代で勤務する「シフト勤務制度」
  • 順番に担当して勤務する「ローテーション勤務制度」

時差通勤

  • 通勤ラッシュの時間帯を避ける「時差通勤制度」
  • 勤務開始と終了を任意に指定する「フレックスタイム制度」

オフィスはひろびろと

  • 勤務時の席を固定しない「フリーアドレス制度」
  • 拠点以外に勤務できる場所を別に設ける「シェアオフィス」や「レンタルオフィス」、「コワーキングスペース」の併用

会議はオンライン

  • Webミーティングツールの導入と利用の奨励
  • チャットコミュニケーションツールの導入と利用の奨励

対面での打合せは換気とマスク

  • 「新しい生活様式」を踏まえての会議室やミーティングスペース利用ルールの作成と周知(例:紙の予約表など物理的な共用を避け、会議室はオンライン予約とする等
  • 「新しい生活様式」を踏まえての職場のルールの作成と周知(例:不織布マスクを従業員に配付する、部屋にアルコール消毒シートを常設する、職場の換気ルールとチェック担当を決める等)

「働き方の新しいスタイル」の要素が福利厚生制度にあるかどうかは、今後、従業員の満足度や採用広報に影響するものと推測されます。

また、福利厚生のトレンドとしても「従業員の健康をサポート、仕事と生活の両立支援」という傾向も表れており、「働き方の新しいスタイル」を追求する形での福利厚生の見直しへのニーズは高いと推察できます。

福利厚生のトレンドについては次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生のトレンドは従業員個人の利益から企業を成長させる力へ

2.福利厚生を見直すべき時期

福利厚生を見直すべき時期としては次の例があります。

  • 新しい生活様式などの時勢の変化や人々の意識が大きく変わる革新があったとき
  • 福利厚生の制度や施策に関係しそうな官公庁の発表や法改正、事件事故の報道があったとき
  • 社内アンケート調査で福利厚生制度の利用率の低下が確認されたとき
  • 新たに福利厚生の制度や施策を導入するとき
  • 他の就業規則を見直すとき

福利厚生が陳腐化していないか、社内のアンケート調査などで定期的にチェックし、その結果をもって見直しを進めるのが妥当です。

また、新たに福利厚生の制度や施策を導入する場合、既にある福利厚生と矛盾しないよう、整合性をとる必要があるため、そのタイミングで福利厚生を見直すことになります。

なお、福利厚生は就業規則の一部としてまとめられるため、他の就業規則を変更するタイミングで定期的に見直すのも一つの手です。

3.福利厚生を見直す方法

福利厚生の見直しのやり方としては、次の方法があります。

  • 見直しに必要な情報収集をする
  • 収集した情報から制度の利用率や使い勝手を精査する
  • 計画見込みと比較して費用が超過していないかを確認する
  • 社員の種類による不合理な待遇差がないかを確認する

見直しに必要な情報収集をする

福利厚生の見直しに必要な情報を収集します。

社内アンケート調査など、福利厚生についての情報収集の工程を福利厚生の策定フローに盛込んでおきましょう。

福利厚生の社内調査の例

調査の実施パターン

備考

全社員に(あるいは社員を属性ごとに抜粋して)福利厚生のアンケート調査を定期的に実施

定期的にアンケートを実施して「一年間で◯◯の福利厚生制度を利用したことがありますか?」という質問を含めることで、社内に福利厚生制度があることを伝え、認知を広げる狙いもある。

ニーズを拾い上げるために、自由回答で福利厚生に対するリクエストができる入力欄も必要。

福利厚生制度の利用後に任意回答のアンケートを実施

不満や改善点、希望など、福利厚生の利用直後の感想を拾い上げ、使い勝手のよい福利厚生にできる。

新しい生活様式に合うよう調査方法も新しい生活様式に合わせ、人力作業を最小限に抑えて自動集計できるよう、Googleフォームなどのオンラインサービスを活用するのがベストです。

性別や年齢、勤続年数、配偶者の有無など福利厚生の制度の利用条件に関わる要素によって、必要な質問項目のみを回答してもらえるように制御できる仕組みが理想ですが、新たな個人情報の取得にならないよう、アンケートには社員番号のみにとどめて分析の際に既存の人事データと外部で連携させる方法を取るか、あるいはアンケート自体を匿名にすることを検討しましょう。

また、社会的・文化的性別(ジェンダー)への配慮等が求められる場合、生物学的性別と明記し、記入してもらうようにします。

何故なら、アンケートの中で生物学上の性別がわかった方がよいのは、産休や生理休暇など、生物学分類上の女性のみが対象の福利厚生が存在するためです。

調査対象の福利厚生制度に性別での利用制限がないケースは省略しても問題ありません(産休や生理休暇などを法律で定められた「法定福利厚生」の範囲でだけ提供し、企業ごとに判断して提供する「法定外福利厚生」に当るような「福利厚生を手厚くしている部分」がないのであれば、生物学上の性別を聞く必要がないケースはあります)。

最低限必要な福利厚生(法定外福利厚生)については次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生なしの会社はない?最低限必要な福利厚生を解説

なお、利用率などを調べるためには、福利厚生制度ひとつひとつに対して、次のような質問を社員に回答してもらう必要があります。

  • [調査対象の福利厚生制度名]を使ったことがあるか
  • [調査対象の福利厚生制度名]の存在を知っているか
  • [調査対象の福利厚生制度名]を使いたいと思うか

調査対象の福利厚生制度を使ったことがある方はその感想、使ったことがない方はその理由を自由記述させるなど、詳細な分析につながる記入欄を適宜、用意します。

また、福利厚生の代行サービスを利用している場合、アウトソーシング先のオンラインサービスによっては、社員の福利厚生の利用実績をダウンロードし、利用率向上の検討材料にできます。

福利厚生の代行(アウトソーシング)サービスについては次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生のアウトソーシングとは?市場規模と種類とメリットを解説

収集した情報から制度の利用率や使い勝手を精査する

調査結果の福利厚生の利用率から陳腐化している福利厚生制度がないか、使い勝手で問題がないかをチェックします。

既存の福利厚生制度で、前回の調査データと比較し、福利厚生の利用率が減少傾向の場合、制度の陳腐化の可能性があると判断できるため、福利厚生の内容や利用条件、福利厚生制度を存続するかどうかを含めた見直しが必要になります。

新たに導入した福利厚生制度の場合は、以前の調査データでの比較はできないため、利用率の見込み想定を算出しておき、調査の結果が想定よりも低い利用率だったら見直しが必要です。

「認知度が低い」や「手続きが面倒」等の他に、利用できる対象や条件に問題がある可能性があります。

福利厚生の利用率については次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生の利用率が低い時に向上させる対処法を解説

計画見込みと比較して費用が超過していないかを確認する

計画見込みと比較して、福利厚生に使った費用が超過していないかを確認します。

福利厚生の費用は会社の事業利益から出すのが基本であるため、計画した見込み以上に費用がかかっている場合、制度設計の見直しが必要になります。

福利厚生を費用面で見直すポイント

検討内容

備考

福利厚生費に計上できる方法がないかを検討する

法定福利厚生は、原則、課税されない福利厚生費に計上できますが、法定外の福利厚生は制度の仕組みなどによって計上できるケースとできないケースに分かれる。

福利厚生の費用として費用がかかるケースでも、福利厚生費に計上できた方が会社にとって有益になる。

もっとユニークな福利厚生にならないかを検討する

独自性のある福利厚生であれば、採用広報や会社の認知度アップにつながり、多少の費用がかかっても、企業に有益な福利厚生になる。

福利厚生のネーミングや利用条件などを工夫し、社員に親しみやすい福利厚生にできないかを検討する。

面白い福利厚生については次のコンテンツで詳しく解説しています。
面白い福利厚生とは?企業の個性を引出す人事制度を整えよう

社員の種類による不合理な待遇差がないかを確認する

福利厚生に、社員の種類による待遇差がないかも確認します。

正規と非正規など社員の種類や勤務形態によって福利厚生に差があり、それが不合理な待遇差であると認められた場合、是正する法的義務があるからです。

待遇差を是正しようとした結果、福利厚生の費用が想定よりも大きくなる可能性があるため、見直しの際は費用面とあわせて確認します。

なお、安易に正規社員の待遇を引下げて非正規社員に合わせる方法で是正しようとすると、従業員満足度を下げて離職を招く可能性があり、注意が必要です。

社員の種類と福利厚生の待遇差については次のコンテンツで詳しく解説しています。
正社員の福利厚生と待遇差がある従業員がいるときに必要な対応とは?

(監修 株式会社SoLabo 田原 広一)

生22-5317,法人開拓戦略室

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