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テレワークの労務管理における課題と解決策を解説

経営課題事例

2023-12-21

「テレワークの労務管理」をテーマに、テレワークにおける労務管理課題や労務管理の成功事例について、経営者向けに解説します。

目次

テレワークを導入する企業は、政府による働き方改革の推進やコロナ禍によって増えました。テレワークを導入するうえで労務管理におけるさまざまな課題があります。

当記事ではテレワークにおける労務管理上の課題と解決策について解説します。テレワークにおける労務管理の成功例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

1.テレワークにおける労務管理の課題と解決策

テレワークにおける労務管理の課題はおもに3つあります。

【テレワークにおける労務管理の課題】

  • 労働時間の管理が難しい
  • セキュリティリスクが増える
  • コミュニケーション不足に陥る可能性がある

労働時間の管理が難しい

多くの企業にとってテレワークにおける課題となるのが労働時間の管理方法です。管理者が従業員の正確な勤怠状況や作業進捗などを把握しにくくなる場合や、従業員が長時間労働になることもあるからです。

従業員の労働時間を適切に管理するためには、あらかじめ勤怠記録に関するルールを定めましょう。たとえば、「出退勤の記録方法」「始業時間の繰り上げや繰り下げ」「中抜け」に関する取り決めを就業規則として制定しておくようにします。

そのうえで、テレワークで把握するべき「出退勤」「在席確認」「業務状況」などは勤怠管理システムやスケジュール管理ツール、プレゼンス管理ツールを活用して管理します。また、コミュニケーションツールを活用することでも情報共有や業務状況の把握が可能です。

テレワークの導入後も正確に従業員の労働時間を管理するために、現行の労働時間の管理方法と照らしあわせながら、ルールの見直しや必要なツールの導入を検討してみてください。

セキュリティリスクが増える

テレワークを導入する場合の課題として、セキュリティリスクが増えることが挙げられます。会社が従業員にパソコンなどの機器を貸与し、従業員が外部に持ち出す機会が増えることで公共の場での覗き見や紛失および盗難による情報漏洩のリスクが増えるからです。

セキュリティリスク対策として、従業員に貸与するパソコンは「HDDの暗号化」「外部メディア接続の制限」「多重認証や生体認証」等などセキュリティ対策が強化されたものを用意する必要があります。

また、必要に応じてあらかじめテレワークを行う勤務場所に関するルールを設けることも検討しましょう。貸与するパソコンの持ち出しを許可する場合は、盗難や紛失など緊急時の対応に関するガイドラインを定めておくことも必要です。

なお、なりすましやウイルスへの対策は、オフィス勤務同様セキュリティソフトの導入が有効です。従業員の私物であるパソコンをテレワークで使用する場合には事前に運用に関するガイドラインを策定することを検討してみましょう。

コミュニケーション不足に陥る可能性がある

オフィス勤務と比較してコミュニケーション不足に陥る可能性があることもテレワークにおける課題として挙げられます。

同じ空間に上司や同僚のいない環境下で勤務する場合、コミュニケーションの手段が限定されるため、気軽に業務上の相談をしにくくなります。また、孤独感によって心理的なストレスを抱えてしまう従業員もいるかもしれません。

コミュニケーション不足が課題となる場合の解決策として、情報共有ツールやコミュニケーションツールを活用する方法があります。コミュニケーションツールにはチャットツールやWeb会議ツールなどがあり、業務上のコミュニケーションが円滑になります。

なお、コミュニケーションツールを活用する際には上司からの返信の催促が部下のストレスにならないように配慮することも必要です。在席状況や進捗管理を行う場合にはスケジュール管理ツールの機能を併用しながら適切なタイミングでコミュニケーションを取ることを検討してみてください。

2.テレワークにおいても労働基準法が適用される

企業がテレワークを導入する際にも労働基準法が適用されます。

【テレワークに適用される労働基準関係法令】

法令名

テレワークに適用される内容

労働基準法

・法定休日(週1回以上の休日)、法定労働時間(週40時間、1日8時間)の遵守

・1か月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制の適用

・フレックスタイム制、事業場外労働によるみなし労働時間制の適用

最低賃金法

・労働者の属する事業場がある都道府県の最低賃金の適用

労働安全衛生法

・健康診断やストレスチェックの実施などテレワークを行う労働者の健康確保

・自宅の作業環境整備に関する助言

労働者災害補償保険法

テレワークにおける労災の補償責任

参照: 在宅勤務での適正な労働時間管理の手引|厚生労働省
テレワーク総合ポータルサイト|厚生労働省
テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン|厚生労働省

従業員が常時10人以上いる使用者は就業規則を定め、所轄の労働基準監督署に届ける必要があります。さらに就業規則で「在宅勤務を命じること」「労働時間」「通信費などの負担」に関する規則を制定すること、従業員への周知が義務付けられています。

また、就業規則届出の義務がない、従業員が常時10人未満の使用者であってもテレワークを導入する際には使用者と従業員間で労使協定を締結し、労働条件を通知する必要があります。

なお、テレワーク実施における労務管理に関しては、厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」があります。初めてテレワークを導入する企業はぜひ参考にしてください。

労使協定は労働の実態に応じて締結する

テレワークを導入する際には、労働の実態に応じて労使協定を見直す必要があります。テレワークにおける労働の実態によっては労使協定の締結と所轄労働基準監督署長への届出が義務付けられている場合があるからです。

たとえば、事業場外みなし労働時間制を適用する場合やフレックスタイム制を導入する場合は労働時間に応じて労使協定の締結を行うのが望ましいでしょう。「事業場外みなし労働時間制」は、使用者が労働者の労働時間を正確に把握できない場合、前もって定めた時間を勤務した扱いにする制度です。

また、本来はテレワークを行う労働者の休憩時間は所属事業場の休憩時間帯とあわせる必要があります。労使協定を締結することによって、所属事業場の休憩時間帯と異なる時間帯に休憩時間を与ることが可能になります。

なお、労使協定の見直し及び締結に関しては厚生労働省の資料を確認し、判断に迷った場合には労働基準監督署に相談してみてください。

3.テレワークの労務管理には社内システムの整備が必要

テレワークの労務管理においては、出退勤管理やスケジュール管理を目的としたICTツールが不可欠となります。テレワークにおいて適切な労務管理を行うためにはオフィスの業務環境をデジタル化およびオンライン化する必要があるからです。

たとえば、テレワークにおける客観的な労働時間の把握や、業務上のやり取り、従業員同士のコミュニケーションにビジネスチャットやビデオ会議を行えるICTツールを導入し、活用します。また、既存のICT環境をそのままテレワークに活用できる場合もあります。

なお、テレワークの労務管理に新たにICTツールを導入する場合、事前に社内システムを整備する必要があります。テレワークの導入を進める際にはIT部門担者に相談しながら環境づくりを進めていきましょう。

4.テレワークにおける労務管理の成功事例

テレワークにおける労務管理上の課題を解決した事例が複数あります。

たとえば、東京都内の情報通信業の会社では自社開発のICTツールを活用しています。自社開発のICTツールを電話転送機能やWeb会議機能などと連携し、オフィス勤務と変わりないコミュニケーションを成功させている事例です。

また、都内の卸売・小売業者は、テレワーク利用者に対して年に1回程度アンケートを実施しています。アンケートの回答内容から状況の把握や意見の収集につなげ、労務管理の改善につなげています。

なお、厚生労働省ではテレワークを導入する際に生じる労務管理上の課題に対応するテレワーク相談センターを開設しています。他社の事例も参考にできるため、活用してください。

5.まとめ

テレワークを導入する場合、労務管理において「労働時間の管理が難しい」「セキュリティリスクが増える」「コミュニケーション不足に陥る可能性がある」という3つの課題が挙げられます。

テレワークにおける課題解決策として、事前にルールを制定することや状況に応じて必要なツールを導入する方法が挙げられます。

また、企業がテレワークを導入する際は労働基準法が適用されます。従業員が常時10人以上いる使用者は就業規則を定めて所轄の労働基準監督署に届ける必要があり、従業員が10人未満の使用者は従業員との間に労使協定を締結し、労働条件を通知する必要があります。

テレワークにおいて適切な労務管理を行うためにはオフィスの業務環境をデジタル化およびオンライン化する必要があるため、ITCツールが不可欠となります。ITCツールを活用できるよう、IT部門の担当者と相談しながら社内システムの整備を行いましょう。

(執筆 株式会社SoLabo)

生23-4225,法人開拓戦略室

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