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弁護士が教える 「危ない取引先」を見分ける具体的なポイント

経営課題事例

2021-08-24

実際に取引先の情報収集やヒアリングを行う際、どういった点に注意すべきなのでしょうか?危ない取引先の特徴と、見分けるポイントを解説します。

目次

将来の貸し倒れを防止したり、企業の社会的な信用を維持したりするために、取引先の与信管理、とりわけ新規取引を行う際のチェックはとても重要です。

新規取引先をチェックする際の情報収集やヒアリングなどの方法や進め方、留意点については、次のコンテンツで解説しています。

弁護士が教える 新規取引先をチェックする3つの方法

では、実際の情報収集やヒアリングにおいて、具体的に相手のどういった点に注意すべきなのでしょうか。「危ない取引先」の特徴と、それを見分けるポイントを紹介します。

1 企業の基本的な情報

1)企業の基本情報が頻繁に変わっている

登記簿謄本等を確認し、会社の商号や本店所在地、役員が頻繁に変わっている場合、休眠会社などを購入するなどしている場合があります。

実際に事業を行っているのであれば、休眠会社を使うこと自体に問題はありませんが、実際には事業は行わずに法人の名前のみを使っている場合があります。

2)設立年月日が代表者の話と整合しない

登記簿上の設立年と、企業のホームページ上の記載や代表者が述べる事業の開始年月が違う場合があります。

当初は個人事業として事業を行い、途中から法人化した場合には、法人の設立年月のほうが新しくなり、その場合は問題ありません。

逆に、法人の設立年のほうが古い場合は、その法人ではかつて別の事業を行っていたり、1)と同様に休眠会社を買ってきたりしている場合がありますので、その場合はヒアリング等で確認することが必要です。

3)同一の住所に多数の会社が登記されている

企業のホームページや官報を検索すると、本店所在地と同一住所に多数の法人が登記されていることがあります。その場合は、実際にそこで事業を行っているのか、他の会社とその会社はどのような関係があるか確認する必要があります。

4)調査会社のレーティングが低い

東京商工リサーチや帝国データバンクなどの信用調査会社のレーティングが低い場合には要注意です。財務状況等について、独自にヒアリングするなどの対応が考えられます。

5)インターネット検索で同姓同名の人が問題を起こしている

代表者などに関し、日経テレコンやインターネット検索を行うと、同姓同名の人が逮捕されていることが判明することがあります。その場合、年齢や住所等から本人でないかを確認する必要があります。本人でないかどうかの確認ができない場合には、さらに調査会社や警察、暴力追放運動推進センターに確認することが考えられます。

2 財務状況の確認

1)債務超過となっているなど株主資本が極端に少ない

貸借対照表上、資産に比べて負債過多になっていないか、また、株主資本が極端に少なくないかなど確認する必要があります。

2)売上に比して利益の割合は適切か、大きな赤字を出していないか

損益計算書上、売上が極端に少なかったり、大きな赤字を出したりしていないかを確認する必要があります。また、売上と利益の割合は適切か確認する必要があります。

3)事業計画が代表者のヒアリング内容と整合していない

創業したばかりの企業については、企業の事業計画が重要ですが、それと代表者が語る内容とが整合しているかを確認する必要があります。

4)決算書や税務申告書、ウェブサイトの記載が矛盾する

決算書や税務申告書、ウェブサイトの記載などと整合しているかを確認する必要があります。整合していない場合には、粉飾決算を行っている可能性があります。

3 企業の本社・工場等の現場の確認

1)事業を行っている様子がうかがわれない

企業の本社や工場、事務所等を実際に訪問し、実際に事業を行っているのか確認する必要があります。

また、事務所の大きさに比して従業員数が多すぎないか等についても確認する必要があります。

2)取引先が偏っている、または企業関係者との取引が大きい

当該企業の取引先が特定のグループに偏っているような場合、その取引先グループの状況によっては大きな影響を受ける可能性があります。

また、株主や役員など企業関係者との取引額が大きい場合には、利益調整を恣意的にできやすいなどリスクは高まります。

3)代表者の話が広大すぎる、または薄すぎる

事業の将来性を計る上で、代表者の資質は重要です。その際、代表者が事業について、現実離れをしたビジョンを語っていないか確認する必要があります。

また、逆に、代表者がビジョンを語れない場合も重要なリスクとなります。

4)契約書等の暴力団排除条項を拒否する

最近では、ほとんどの契約書に暴力団排除条項などが含まれています。実際の暴力団員が、これに該当することを知りながら契約を締結して、詐欺等により逮捕される事例が相次いでいます。相手方が暴力団排除条項を拒絶するなどの場合には大きなリスクがあるといえます。

5)支払先として契約先とは異なる口座を指定する

支払先として契約当事者ではない相手方を指定する場合には、税務リスクや何らかの不正に関与するリスクがありますので、その理由を確認する必要があります。

6)売買取引なのに物の引き渡しを行わない

売買取引であっても単に仲介するのみであり、物は、買主から別の売主に直送されることがあります。これ自体、実際に仲介をしているのであれば問題ありませんが、場合によっては、循環取引などの架空取引に関与してしまう可能性があります。

そのため、売買の対象物が実際に存在して、直送されているのか等については確認する必要があります。

ここまで紹介したポイントに気をつけることで、一定以上「危ない取引先」を回避することはできます。しかし、リスクをゼロにはできません。

そこで、取引先企業について保険会社がリスク審査を行い、万が一、取引先企業が倒産したり、支払遅延したりして売掛債権が回収できない場合に、保険金が支払われる取引信用保険などに加入するのも一策です。

取引信用保険のご案内

以上

(弁護士監修のもと日本情報マート執筆)

生21-108,法人開拓戦略室

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