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従業員研修の効果を高めるには? 具体的なポイントを解説

経営課題事例

2021-03-24

時間とコストをかけて従業員研修を行うからには、しっかり人材の成長につなげたいものです。そこで効果的な研修を実施するポイントを解説します。

目次

多くの企業で階層別、目的別にさまざまな従業員研修が実施されています。

例えば、新入社員に社会人としてのマナーや仕事の基礎を教える「新人研修」、管理職に登用する前に管理職としての心構えを教える「リーダー研修」などがあります。昨今では、ハラスメントに関する正しい知識を従業員に身に付けさせる「ハラスメント防止研修」なども注目されています。

研修の目的は研修を通じて人材の成長を図ることですが、熱心に運営するほど企画や回数を重視し、「実施すること」が目的になってしまいがちです。そうなると、肝心の効果検証と改善が行われず、その結果、研修を実施する側も受講する側も、いまひとつ効果が実感できないようになってしまいます。

せっかく貴重な時間とコストをかけて行うからには、費用対効果に見合った研修にしたいものです。そこで、効果的な従業員研修を実施する際のポイントについて解説していきます。

1 研修受講前の上司からの動機付けが大事

参加が強制されている研修は「仕事」となります。貴重な勤務時間を割いて研修を受講してもらうわけなので、受講者に対して上司などから受講の動機付けをしっかり行うことが大切です。

受講者が、他の仕事が気になって研修に集中できないということがあってはなりません。上司は受講者に対して、研修受講の前に気になる仕事にはメドをつけておくこと、不測の事態が起きた場合には職場の他のメンバーがカバーしやすいように引き継ぎを行っておくことなどを伝えます。

また、受講者の中には、研修案内を見て自分に役に立つ研修なのかを理解していないケースがあります。そのため、「忙しいときに研修に参加しなくてはならないなんて」とネガティブな気持ちで研修に臨んでしまうことがあります。

研修は一般に、その受講者が知らないこと、経験したことがないことを学ぶ場なので、受講してみないと受講者本人には効果があるかどうか判断できないのが普通です。そのため、その研修を受講した経験のある上司が、どういう目的の研修で、何を習得してきてほしいのかという動機付けを行って、研修に送り出すことが大切です。

2 研修のゴールを明確にする

研修を実施する企業側は、その研修を通じて受講者にどうなってほしいか、というゴールを明確にします。

例えば「〇〇のセールスができるようになる」「〇〇について理解し実践できるようになる」というような具体的なゴールです。そうすることで、受講者は自分に期待されていることを理解し、研修を受講する態度を整えます。

3 時間配分に注意する

研修を集中して受講できる時間はおおむね50分ともいわれます。50分の研修+10分の休憩で1時間を一区切りにするなど、集中して受講できるような配慮が必要です。

また、1日掛かりの研修では、昼食後の午後の研修は集中力が途切れる傾向にあります。この時間帯には確認テストやグループワークなど、受講者が手や体を動かして集中して取り組める課題を取り入れます。

 

4 参加型のロールプレイングを活用する

一方的に大量の知識を詰め込む研修は、受講者にとってストレスです。研修効果を高めるには、伝えなければならないことを厳選し、所々で知識の定着を確認しながら進めていく方法がよいでしょう。

知識としてインプットした情報を声に出したり、実際にケーススタディで使ってみたりするなど、アウトプットできる参加型の研修にすることで知識の定着が図られます。

参加型の研修の中で効果的なのが、ロールプレイングという手法です。これは、「役割(ロール)を演じる(プレイング)」というもので、例えば、二人一組で片方をセールスパーソン役、片方をお客様役になってもらい、実際の商談を演じてみるのです。

今学んだばかりのことでも、実際のセールスの場面を模してやってみることで商品理解を深めたり、お客様目線に立つことで客観的に自社商品を見たりできるなど、さまざまな効果が期待できます。

セールスの場面だけでなく、管理職と若手の面談の場面や、クレームのお客様に接してみる場面など、企業の多くの場面でロールプレイングは有効です。

5 オンライン研修を導入する

新型コロナウイルス感染症の影響で急速に広がってきたのが、オンラインツールを活用した研修・セミナーです。オンライン環境さえあればどこからでも参加が可能ということで、各企業が導入を始めました。

オンライン研修では、講師が一方的に話すだけではなく、オンラインツールによっては、受講者を小グループに分けてディスカッションしてもらう機能や、受講者側から質問や意見をもらう場合の合図を送れる機能などもあり、リアルな研修のような双方向のやり取りも可能です。

ただし、オンライン研修には向き不向きがあります。講師が知識や経験を伝える座学形式には向いていますが、受講者がいる場所や環境はまちまちであるため、実地を想定して手や体を動かしたり、受講者同士で共同作業をしたりする実習形式の研修にはあまり向きません。

とはいえ、実際の商談で徐々にオンライン商談が増えてきていることもあり、オンラインによる対話や情報収集に慣れるという観点でも、オンライン研修の重要性が高まってくるかもしれません。

しかし、自前でオンライン研修の中身を用意するには様々な手間や時間がかかります。そこで従業員向けオンラインセミナーと称して、各企業が従業員研修を提供しているケースもありますので、それらを活用することも有効でしょう。

日本生命でも、従業員向けオンラインセミナーを提供しており、次のページでサンプル動画を視聴することができます。

日本生命 従業員向けセミナー一覧

6 「反転学習」で効率アップを図る

1)反転学習とは?

オンライン研修の広がりに伴って注目されているのが反転学習です。もともとは教育の現場で取り入れられているもので、従来の「授業=インプット」と「宿題=アウトプット」という役割を逆にした手法です。

従来の研修は、知識のインプットに多くの時間を使い、残った時間に演習を行い、あとは各自に復習を促すというものでした。

反転学習を取り入れた研修の場合、受講者は研修に先立ち、基本的な研修内容などの動画コンテンツをパソコンやスマートフォンなどで視聴してインプット(事前学習)します。その上で、実際の研修で、ロールプレイングなどの演習を行いアウトプットします。

2)反転学習のメリット

・学習効率の向上

事前学習を徹底することで、実際の研修では、ロールプレイングやプレゼンテーションといった参加型の学習に集中することができ、効率良く実務的なスキルを習得することができます。

また、従来の研修では、同じ2時間の講義でも、受講者によって知識の習得度合いはまちまちでしたが、反転学習ではオンラインで事前学習を行うため、時間や場所を問わず、受講者各々のペースで学ぶことができます。

動画コンテンツを用いることで、例えば、ビジネスマナーや業務内容などの手本を、自分がしっかり習得できるまで繰り返し見返すことができるのです。

・企業、受講者双方の負担軽減

事前学習を徹底してもらうことで、企業側は、基本的な研修内容を繰り返し教える手間が少なくなります。質問されたことだけに答えればよいため、人材育成に割く時間やコストが抑えられ、双方の負担軽減にもつながります。

反転学習前は集合研修で2時間かけてレクチャーしていた講座が、事前学習を徹底することで30分に短縮されたというケースもあります。

3)反転学習の課題

事前学習に使う動画コンテンツを用意する手間やコストが発生します。コンテンツの内容によっては、自社で作成するのが難しく、外部に制作を依頼することもあるでしょう。

その場合は、既存のeラーニングサービスを事前学習の課題に活用して、手間やコストを抑えるのも一策です。

 

7 研修後のフォローを行う

研修が終了するときに受講者にアンケートをします。研修の感想などを聞くだけではなく、明日からの行動にどのようにつなげていくか、という行動宣言を記載させることも有効です。学んだことの中から1つ、これはすぐに実行・実践してみようということを挙げてもらうのです。

研修後、一定期間を経過したくらいで、受講者から事後課題を提出させることも効果的です。研修中はやる気が高まっていても、研修が終了して平常業務に戻ればいつもの仕事に忙殺されてしまいます。そうこうしているうちに研修で学んだことを試そう、というモチベーションは下がっていきます。

そうならないように、研修後の一定期間までというように期限を切って、そこまでに必ず実行するように仕組みをつくります。なお、そのことは所属長にも理解してもらい、必要な援助を受講者に対して行うことも業務上の指示として出しておくと、なおよいでしょう。

8 短期的な成果を求めない

研修というのは、受講者に知識や技術を教え、日常の行動の変化を促すきっかけを与える場です。そのため、研修そのものに即効性の成果、例えば、研修を受けて短期的に営業成績がどれだけ上がるか、といったものを求めることはしません。

短期的な成果を求めるのであれば、研修に時間を費やさずに営業時間を確保したほうがよいでしょう。

研修で得られた情報をきっかけに受講者自身が自発的にやってみて、試行錯誤する中で成果として現れるものです。研修を実施する側は、研修の効果が出るまでには、それ相応の時間がかかるということを心に留めておきましょう。

研修の効果を高めるためには、ここで紹介した実施する際のポイントを押さえるのと同時に、自社に合った研修を行うことも重要です。

次のコンテンツでは、自社に合った研修を選ぶためのヒントや、効果的な研修事例、課題別の研修一覧を紹介しているので、ぜひご覧ください。

社員満足度の高い有意義な企業研修(経営インサイト2020年1月号)

以上

(執筆 日本情報マート)

生20-4775,法人開拓戦略室

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